「モノのインターネット(Internet of Things:IoT)」という言葉が登場してからそれほど時間が経っていませんが、これからは「人のインターネット端末化」が始まりそうです。Internet of Personsなら、IoPでしょうか。

 そんなこと、前からあるじゃないかと思う人がいるかもしれません。例えば、携帯電話機やスマートフォンの普及で、人の位置情報については、技術上は既にインターネットからある程度分かるようになっています。これから始まろうとしているのは、位置情報どころではなく、人の体のあちこちにセンサーを付けて、体のより細かな動きや心臓の動き(つまり心拍情報)、その他の体調情報にインターネットからリアルタイムにアクセスできるようにする動きです。こうしたセンサー端末は、重さを感じないほど軽く、サランラップより薄くなって1週間、あるいはそれ以上の長期間体に貼りつけたままでも気にならない方向に進化しています(2014年11月24日号の特集「肌に溶け込むエレクトロニクス」)。体の表面だけでなく、体内にセンサーを埋め込むことを考えている技術者、研究者もいます。

 そんな悪趣味な、と思うなかれ。こうしたセンサーを利用するのには理由があります。まず、センサーを利用する個人にとって、メリットが大きいのです。例えば、心拍や脳波をリアルタイムにモニタリングできれば、心臓や脳のわずかな異変を素早く察知して、大事になるのを防げます。手の震えを解析することでパーキンソン病を早期に見つけたり、妊婦のお腹に敏感な振動センサーを付けておくことで、胎児の心拍をリアルタイムにモニタリングできたりしそうです。赤ちゃんに心拍センサーなどを付けておけば、乳児突然死症候群(Sudden Infant Death Syndrome:SIDS)と呼ばれる不幸な事故を防げるかもしれません。

 スポーツをする人にとっては、これまでにない新しいトレーニングができるようになりそうです。汗の中に含まれる乳酸濃度を検知するセンサーの開発が進んでいるからです。実現すれば、例えば筋力強化のトレーニングやランニングの練習において、どれぐらい効果や筋肉疲労があったかをその練習の最中、または直後に知ることができます。これまで、乳酸値を調べるには、採血をして、病院にある高価な装置で調べる必要がありました。これではランニング中の乳酸値の変化を知るのは無理です。新しいセンサーでトレーニングの効果がリアルタイムで分かれば、トレーニング方法がガラリと変わりそうです。