いよいよ「ビズラボ」が始まった。ビズラボは、日経BP社が主催し、私が講師を務める実践型ビジネス講座である。私は同様の講座を他でも開いており、既に1000人を超える受講者OB・OGがそれぞれの組織に戻って活躍している。私としては、本当に講師冥利に尽きるというしかない。

 この講座の特長は、何と言っても「実際のビジネスが立ち上がる」ことである。受講者の企業(研究所・機関)の事業や現況を聞きながら、私がアイデアを出して、事業化の可能性が高い事業テーマを具体的に提案する。そのテーマについて、受講者がグループに別れてワークショップを重ね、最終的にビジネスモデルの企画書を創り上げるというものだ。

 今までに、数多くの事業や新商品が立ち上がった。そのほとんどが、受講者の企業同士でアライアンスを構築して進んでおり、講座の大きな理念である「フィールド・アライアンス(Field Alliance、事業基盤の共有)」を実践している。これも講座の特長だ。

 そして、もう一つの大きな特長は受講者や関係者同士の「絆(きずな)」である。ビジネスに絆が必要なのかと思う方も多いだろうが、フィールド・アライアンスには利害を超えた人間関係が欠かせない。それこそが絆ともいえるもので、参加者同士の極めてフレンドリーな関係が、絶対に必要なのである。

 だから、この講座には二つのルールがある。一つは、「ノー」と言わないこと。もう一つは、責任のない開発をすることだ。

 1度体験すれば分かるが、ノーと言わなければ、人間は無尽蔵といっていいほどアイデアがあふれ出てくる。今まで出なかったとすれば、それは周りにノーと言う者がいるからであって、アイデアの芽をすぐに摘んでしまうからだ。

 もう一つの責任のない開発も、非常に重要である。責任を負わない立場になったとたん、人間の心は解放される。そして自然体になり、余計な策略や利害に走ることなく、正しい道を選択できる。人間というのは、否定されると臆病になったり腹を立てたりする。そして、無意識のうちに本当は取らなくてもいい責任を感じるものである。

 ノーと言わない、そして無責任な開発をすることは、すなわち誰もが潜在的に持っているアイデアを触発して活性化し、結果的に新事業・新商品開発を大いに促進させる、最も速効性のある特効薬なのだ。