「今意義を問い直すSEMICON Japan」と題し、日本の半導体産業での展示会のあり方、情報発信のあるべき姿について考えていただいた今回のSCR大喜利。今回の回答者は某半導体メーカーの清水洋治氏である。



清水洋治(しみず ひろはる)

某半導体メーカー
 某半導体メーカーで、(1)半導体の開発設計、(2)マーケット調査と市場理解、(3)機器の分解や半導体チップ調査、(4)人材育成、という四つの業務に従事中。この間、10年間の米国駐在や他社との協業を経験してきた。日経BP半導体リサーチにて、半導体産業に関わるさまざまなトピックスを取り上げつつ、日本の半導体産業が向かうべき方向性を提起する連載コラム「清水洋治の半導体産業俯瞰」を連載中。

【質問1】日本の半導体産業は、世界の半導体業界そして半導体ユーザーに向けてどのような情報を発信すべきなのか?
【回答】曇天でも月がどこにあるかを示すこと

【質問2】装置・材料のサプライヤ、デバイス・メーカー、そしてデバイス・ユーザーが情報を取得する場として、展示会は有効だと感じるか?
【回答】場がなければ、何も始まらない

【質問3】日本の半導体産業および電子機器産業を元気にするために、今展示会などのイベントでできることは何か?
【回答】テーマをもっと先に置くべき

【質問1の回答】曇天でも月がどこにあるかを示すこと

 半導体に関わらず、電子技術に携わる全てが、人類全体の「より快適」で「より安全」で「より便利」な世界を作ることを目指している。クルマが自動運転になっていくのも、広義では必ず人類全体の幸福につながっていく。ウェアラブルも早期の病気発見や、人類全体のより快適であるためのデータを所得するために使われていくと信じている。

 そのために、2つのアプローチが考えられる。より研ぎ澄まされたデバイスや素材を用いる方法と、既存を組み合わせていくこと。日本には、前者はまだまだ豊富にある。尊敬できる素材メーカーは山ほどある。後者の組み合わせる力は若干日本が弱いところだと感じているが、それもイマジネーションの幅を広げれば、ドンドン新しい組み合わせを生み出す土壌はあると思っている。

 日本には世界にない風土(四季の豊かさ)があり、そのために建築なども独自の進化を古来から進めてきた。ガラパゴスと携帯電話を揶揄(やゆ)したが、ガラパゴスでもいいと思う。独自の進化をもっと肯定して、もっと育てていく、そんな世界観を全員が捨ててしまうことの方がまずい。曇天でもどちらの方角に月があるかを示せるならば、それは十分に情報になる。それには、日本式の感覚をもっと自信を持つことしかない。必ず潮目は変わるはずだ。