電子業界・半導体業界は展示会シーズン真っ盛りだ。10月7日から11日に掛けて開催された「CEATEC Japan 2014」は、好天にも恵まれ、昨年比で6.8%増の15万912人が来場した。しかし、日本の電子産業が最も輝いていた時期である1986年に開催された前身の展示会「エレクトロニクス・ショー」の44万3500人と比較すると、来場者数は約1/3に減ってしまった。

 12月3日から5日には、日本の半導体産業の一大イベントである「SEMICON Japan 2014」が開催される。SEMICONもご多分に漏れず、近年は来場者数が右肩下がりで推移してきた。また東アジアでは、中国、韓国、台湾でもSEMICONが開催され、日本で開催する意義が問われるようになった。

 今年のSEMICON Japanは、25年ぶりに会場を東京に戻し、東京ビッグサイトで開催する。展示会のコンセプトも一新し、日本で開催する半導体業界の展示会を再定義して臨むと言いう。近年の同展は、装置・材料技術のサプライヤとデバイス・メーカーのいつもの顔見知りが、Mooreの法則に沿った製造技術の進展を予定調和的に確認する場になっていた。SEMI Japanは、これを新しいアプリケーションを半導体の作り手と使い手が共に探るキッカケとなる場を提供し、日本から世界に発信できる技術の誕生を支援していくと意気込んでいる。

 今回のSCR大喜利では、「今意義を問い直すSEMICON Japan」と題し、日本の半導体産業での展示会のあり方、情報発信のあるべき姿について考えていただいた。今回の回答者は微細加工研究所の湯之上 隆氏である。

湯之上 隆(ゆのがみ たかし)
微細加工研究所 所長
湯之上隆(ゆのがみ たかし) 日立製作所やエルピーダメモリなどで半導体技術者を16年経験した後、同志社大学で半導体産業の社会科学研究に取り組む。現在は微細加工研究所の所長としてコンサルタント、講演、雑誌・新聞への寄稿を続ける。著書に『日本半導体敗戦』(光文社)、『電機・半導体大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北-零戦・半導体・テレビ-』(文書新書)。趣味はSCUBA Diving(インストラクター)とヨガ。

【質問1】日本の半導体産業は、世界の半導体業界そして半導体ユーザーに向けてどのような情報を発信すべきなのか?
【回答】関係企業が、こけんにかけて新技術や新製品を展示するべき

【質問2】装置・材料のサプライヤ、デバイス・メーカー、そしてデバイス・ユーザーが情報を取得する場として、展示会は有効だと感じるか?
【回答】最近は特に有効ではないと感じていた

【質問3】日本の半導体産業および電子機器産業を元気にするために、今展示会などのイベントでできることは何か?
【回答】大学生をはじめ、小中高の学生が、社会見学できるようにしたらどうか

【質問1の回答】関係企業が、こけんにかけて新技術や新製品を展示するべき

 ここ数年、SEMICON Japanには足を運んでいない。行っても面白くもなんともないからだ。例えば、装置メーカーは、随分前から装置を置かずに、パネルだけの展示となった。しかも、そのパネルは既に知っているものがほとんどで、新規性が感じられなかった。

 SEMICON Japanが如何につまらないかは、クルマ産業のモーターショーと比べれば明確である。モーターショーの場合、各自動車メーカーが、必ずや新しいコンセプトカーの実物を展示する。それが将来モノになるかどうかは不確かでも、そのメーカーのポリシー(もしかしたらプライドまたはハッタリもあるかもしれない)として、断固として、実物を見せる。

 世界の半導体業界を振り向かせたいならば、装置・材料のサプライヤやデバイス・メーカーは、こけんにかけて(それがまだあるならば)、新技術や新製品を見せなければならない。