今回のSCR大喜利では、「ビッグデータの棲家は半導体に何を求めるのか」と題し、なかなか動きが見えにくいデータセンター向け半導体をどのように考えていったらよいのか探っている。今回の回答者はアーサー・D・リトルの三ツ谷翔太氏である。

三ツ谷翔太(みつや しょうた)
アーサー・D・リトル(ジャパン) マネジャー
三ツ谷翔太(みつや しょうた) 世界最初の経営戦略コンサルファームであるアーサー・D・リトルにて、エレクトロニクス産業を中心とした製造業に対する新規事業戦略・研究開発戦略・知財戦略の立案支援、ならびに経済産業省を中心とした官公庁に対する産業政策の立案支援に従事。

【質問1】データセンター向けデバイスの市場で、半導体業界の勝ち組となるのはどのような企業か?
【回答】メーカーでなく“ユーザー企業自身”という未来もありうる

【【質問2】パソコンやスマートフォンなど端末向けデバイスとデータセンター向けデバイスでは、そのビジネスモデルに違いがあるのか?
【回答】テストベッドなどの“エコシステム設計”ビジネス

【質問3】データセンター向けデバイス市場の成長は、半導体の設計・製造技術にどのような影響を与える可能性があるのか?
【回答】メーカーの役割はデバイス提供から“開発環境”提供へ

【質問1の回答】メーカーでなく“ユーザー企業自身”という未来もありうる

 デバイスだけを見れば、データセンター向けビジネスが高成長事業となっているIntel社、サーバー向け半導体以外ではパワーマネジメント分野におけるInfineon Technologies社など、データセンター領域を成長機会と見込む半導体デバイス・メーカーは多い。

 しかし、業界構造全体を俯瞰した際に起こっている大きな変局は、デバイス・メーカーの取り組みではなく、むしろユーザーとベンダーの境界線そのものの変化にある。金融におけるHFT(High frequency trading)などの分野ですでに起こっていることであるが、FPGA(field programmable gate array)をベースにしてユーザー自身が回路設計をするインハウス開発の流れが、業界としての役割定義や付加価値構造そのものを変えつつある。

 もはや、“半導体業界の中”での勝ち組や生き残りを議論する時代ではなく、ユーザーまでを含めた“産業バリューチェーン全体の中”での価値の取り方を議論すべき時代になっているように思える。