先ごろ、米Appleと米Facebookの最高経営責任者(CEO)が中国を訪れ、それぞれ同国の重鎮と会談したと報じられた。いずれも中国における事業展開がスムーズに進まない状況が続いており、今回の訪中はその解決を図るためと見られている。

Cook CEO、訪中の狙いは中国との良好な関係構築

 AppleのTim Cook CEOは、10月22日に北京市で副首相の一人である馬凱(Ma Kai)氏と会い、「ユーザー情報の保護について意見交換した」と伝えられた。この会談について報じた新華社通信のニュースサイト、Xinhuanet(新華網)の記事には詳細が書かれておらず、両氏が具体的にどのような話をしたのかは分からない。だが英ReutersによるとCook CEOは後にこの会談について「非常に率直な意見交換ができた」と話している。

 実は会談の前日、Appleは同社のクラウドサービス「iCloud」へのサイバー攻撃を確認したとの声明を出していた。それに先立ち、中国のオンライン検閲を監視しているサイバーセキュリティ監視団体「GreatFire.org」は、攻撃者が偽サイトを設置する手口で、不正に情報を入手しようとしたと報告していた。

 Appleは声明で攻撃者が何者かであるかについては触れなかった。だが一部のセキュリティ専門家は中国当局が関与した可能性があるとの見方を示した。ただし中国はこの問題への関与をきっぱりと否定し、むしろ同国が攻撃の犠牲者であると反論した。

 中国では米国家安全保障局(NSA)の元契約職員、Edward Snowden氏が米当局の情報収集活動を暴露して以来、米国のテクノロジー企業に対する警戒を強めている。

 Appleの製品をめぐっては、今年7月に国営テレビの中国中央電視台(CCTV)が「iPhoneは利用者の情報を収集しており、中国の安全保障を脅かしている」などと非難した。今年8月には、iPadなどのApple製のコンピュータ機器が中国政府機関の調達リストから除外され、中央や地方の政府機関による購入が禁止されたと報じられた。

 中国本土では「iPhone 6」と「同6 Plus」が米国や日本などから1カ月遅れで発売されたが、その理由はセキュリティの問題を懸念した当局が免許を公布しなかったためだと言われている。

 そうした中、Appleにとって中国市場は重要度が高まっている。今年4~6月期決算の電話会見でCook CEOは「中国におけるiPadの伸び率は51%、Macは39%。正直なところ中国は我々にとって驚きだった。中国市場は好調と考えていたが、結果はそれ以上だった」と述べていた。

 また今年7~9月期の決算では、香港、台湾を含むグレーターチャイナの売上高は同社全売上高の14%を占めた。ただ、これには10月17日に中国本土で発売されたiPhone 6/6 Plusの販売実績は含まれていない。このことからその実績が反映される10~12月期には大きな躍進があるとの観測が流れており、Cook CEOも大いに期待している。