最近、物忘れが多くなった、と言う人が周りに増えた。それは、私の歳周りに近い人が多いからだろうと言われそうだが、実はそうでもない。案外に若い人も、物忘れをすると言うのである。

 多くの人は、物忘れをすると不安になるらしい。それは、老い、すなわち加齢とイコールの関係にあると思っているからだろう。だから、物忘れをすることが多くなると、歳を取ったものだと思い込み、人生の残り時間が短くなったと不安になり、悲しい気持ちになるのであろう。

 かく言う私も、それ相応の年齢になってしまったと言うしかない。この仕事を始めて40余年、同年代の人の多くは定年退職をしている年齢なのだ。しかし、物忘れは多いが、それで嘆くことはない。嘆くどころか、忘れることが好都合に感じることが多いのだ。実は、忘れることで、開発が上手くいくのである。