今回は、中国市場を中心に急増しているLTEスマートフォンとチップセット市場の動向を解説する。もともと、LTEは3Gに比べて速いペースで普及しているが、2014年から2015年にかけて市場が急拡大している。背景には、中国市場でLTEサービスが垂直的に立ち上がったこと、欧州でLTEネットワークが普及し始めたことなどがある。

 LTE規格は3GPPが定めており、年々改良された規格がリリースされている。更新内容の大きなものとしては、通信速度の高速化や利用可能な周波数の追加がある。他にも、ヘテロジニアスネットワーク(heterogeneous network)、SON(self organizing network)、M2M用LTE(LTE MTC)、ロケーションサービス(location service)などの機能が追加されていく。

中国でも立ち上がったLTEスマホ市場

 LTEは通信方法の違いによってFDD方式とTDD方式に大別できる。現時点では2Gや3Gと周波数の使い方が同じFDD-LTEが大半を占めるが、2014年からはTDD-LTEの利用が増加している。背景には、TDD方式を主力とする中国市場におけるLTEの立ち上がりや、グローバルローミングを目的にFDD/TDD両対応のハイエンドスマートフォン端末が増加していることがある。

 LTE規格の商用化状況やLTEに利用する周波数は、国や通信事業者によって異なる。近年、特に先進国の通信事業者は競争力強化に向けて、VoLTE (Voice over LTE)やLTE Category 6、3 Carrier Aggregationなど、最新のLTE規格を積極的に採用する傾向が強い。そのため、先進国の通信事業者向けLTEモデムチップ(ベースバンドIC)のサプライヤーは限定される。LTEサービス普及で後れていた欧州でも2013年後半から普及が進み、2014年には多くの通信事業者がLTE Category 6サービスを開始した(図1、図2)。

図1●LTE規格別の最大通信速度
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図2●2014年第2四半期時点での主なLTEカテゴリー6サービス事業者
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