ここのところ無線規格の話ばかり続いていたので、手を動かして、何かを作る記事を書くことを思い立ちました。そこで考えた企画が弊社がリリースしている「SX-IMAPP-SDK」を用いて、「iPhoneから無線LAN(Wi-Fi)経由で操作できる電気スタンドを作る」、です。第1回はSX-IMAPP-SDK開発環境のセットアップ編です。

SX-580-2700DMとSDKについて

 「SX-580-2700DM」は弊社のインテリジェント無線モジュール「SX-580」の開発キットバージョンです。標準版SX-580とSX-580-2700DMの違いはフラッシュメモリーが64Mビット(8Mバイト)から256Mビット (32Mバイト)に拡大されていることで、rootfs領域の余裕を大きく取ってユーザープログラムの柔軟度が向上している点です。フラッシュメモリー以外の仕様は同一であり、列挙すると下記のようになっています。

CPU:Freescale i.MX280 ARM926EJ @ 454MHz
RAM:32M x 16ビット(64Mバイト)SDRAM @ 205MHz
ROM:64M(8Mバイト)または256Mビット(64Mバイト) SPI Flash @ 80MHz
LAN:1 x 10/100BASE Ethernet
WLAN:SX-SDMAN 1x1 dual-band 802.11n (AR6003)
Bluetooth::SX-SDMAN Bluetooth 4.0+LE (AR3002)
I/F:
3 x UART (1 x console、2 x data)
2 x USB2.0FS OTG
1 x SPI
1 x I2C
11 x GPIO

 SX-IMAPP-SDKはSX-580-2700DM上で動作するLinuxのBSP (Board Support Package) に相当するものです。基本的にはブートローダー(U-Boot)、Linuxカーネル、Linuxファイルシステム(rootfs)を生成するためのソースコードとビルド環境、そして無線LANのドライバーとターゲットファームウエア(バイナリー供給、ソースコード非公開)から構成されています。ビルド環境はシンプルなMakefileとスクリプトによるもので、EclipseのようなGUI統合環境にはなっていませんし、LTIBや YOCTOのようなパッケージマネージャも持っていません。原始的とも言えますし、シンプルなだけに分かりやすいとも言えます。

 SX-IMAPP-SDKはLinux上で動作します。Windows上でSX-IMAPP-SDKの開発を行う場合は仮想マシン(Virtual Machine)上にLinuxをインストールし、その上にSX-IMAPP-SDKをインストールすることになります。弊社からはUbuntu 9.04(April 2009)のVMイメージが推奨環境として提供されています。

 Ubuntuのデフォルトインストール状態では開発ツールがほとんど入っていないので、クリーンインストールした場合はapt-getで色んなものを取って来なければなりませんが、silexから配布されているVMイメージではSX-580のビルドに必要なものは一通りインストールされた状態になっています。