自分の直感をもっと信じてもいい

――デザインマネジメントのデザインという言葉には、形や色のデザインだけではなく、全体を俯瞰して設計するという意味が込められているわけですね。とはいえ、実際はそのような意味でデザインという言葉があまり使われていないので、皆さんの意図もなかなか伝わらないのではないかと思います。

田子裕子:そうですね。例えば、本当に絵を描くなど狭義のデザインをアウトプットするところまで体験していないと、デザインマネジメントとして自分の思いを込めて一気通貫で物事を実現するプロセスの全体を理解するのは難しいと思います。それでも、これからは総合力が必要になるから、デザインやデザインマネジメントというアプローチが有効だということは広く認識されているのではないでしょうか。

(写真:栗原克己)

 実際に経営者レベルでも私たちがやっているデザインマネジメントに強い興味を示しています。ここ数カ月は特に感じます。デザインマネジメントのプロセスは、プロジェクトに関わる全員が理解している必要もなくて、必要なときに私たちのような人間に声を掛けていただければ、いつでも一緒に動けます。

 それよりも、今までは縦割りで物事を考えていて、自分の部署の生産性や合理性ばかりを考えていたのが、俯瞰するということを知るだけでもかなり楽になるのです。俯瞰することを忘れてしまっているだけともいえます。あとは、数字ばかりを追うのではなくて、もっと自分の直感を信じていいということ、むしろその方が大事だということを理解していただきたいと思っています。