連載趣旨
 以前、「楽しくなければテレビじゃない」というスローガンを掲げたテレビ局があった。至言である。開発も、実は同じなのだ。楽しくない開発から生まれてきたものが、どうして人の心を動かせるだろうか。

 ただし、開発を楽しむには、それが“自分ごと”になっていなければならない。開発が“他人ごと”である限り、優れたアイデアやコンセプトは出てこない。

 開発プロジェクトのメンバーに“自分ごと”と捉えてもらうためには、どうすればいいのか。田子學、田子裕子、橋口寛の3氏は、そんな問題意識に基づいて多くの企業を外部から支援し、「デザインマネジメント」という手法を確立した。そこに至るまでの経緯を振り返り、“楽しい開発”を実現するための道筋を探る。
田子學(たご・まなぶ)
エムテド 代表取締役/アートディレクター、デザイナー
東芝デザインセンター、リアル・フリート(現・amadana)を経て、エムテドを起業。幅広い産業分野のデザインマネジメントに従事。「デザインを社会システムにする」をモットーに、総合的戦略によってコンセプトメークからブランドの確立までを視野に入れてデザインしている。GOOD DESIGN AWARD、Red Dot Design Award、iF Product Design Award、International Design Excellence Awardsなど世界のデザイン賞受賞作品多数。慶応義塾大学大学院特任教授。
田子裕子(たご・ひろこ)
エムテド 取締役
オフィス家具メーカーにて次世代オフィス研究に携わった後、大学研究室に在籍し、フリーランス活動を開始。現在は育児と仕事を両立しながら、生活者としての鋭い意見によってコンセプトメークする役割を担う。女子美術大学デザイン・工芸学科非常勤講師。
橋口寛(はしぐち・ひろし)
ユーフォリア 代表取締役
米ダートマス大学タックススクールMBA。メルセデス・ベンツ日本、アクセンチュア戦略グループを経て独立。ハンズオンでのマネジメントに従事し、鳴海製陶取締役を経て現職。新規事業創出などのコンサルティングを行う。慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科非常勤講師。