これまで、本連載において価値に注目して考えることが最も重要であること、それをどのようにして発想するかということを述べてきました。では価値さえ発想できればモノができるかというと、事はそう簡単ではありません。発想が既存の延長に陥らないために、実現可能性の視点を意識的に外してきたため、その価値を実現するための技術・手段については未知数です。

 今回はこの実現手段をどのように探索し、見つけていくかということについてお話していきます。

技術探索の手順

 本連載の第2回でも述べたように、価値が新しければ新しいほど、従来の延長線上の技術で実現するのは難しくなる傾向にあるため、新しい技術や手段が必要になります。新しい技術と聞くとゼロから開発する必要があるように思えます。しかし一見関係なさそうな技術・手段の組み合わせによって、新たな価値を実現した例はいくつもあります。「お客様を待たせずに新鮮な寿司を提供できる」という価値をベルトコンベヤーで実現した回転寿司はその好例といえるでしょう。ベルトコンベヤー自体は工場では広く使われている物で新しさはありませんが、飲食店に導入したことで、「お客様に迅速に提供する」という価値を実現しました。

 それでは価値とは一見関係のなさそうな、それでいて実現に結びつく技術をどうやって見つければよいでしょうか?

 iTiDコンサルティング(以下iTiD)は様々なお客様とこの課題に取り組み、以下の流れで技術を探索することによって、実現性の見えていない価値に対しても有効な手がかりを得られることが分かってきました。
・価値を体系化し、実現すべき価値を明確にする
・アナロジーによって技術アイデアを発想する
 -身の回りのモノから発想する
 -自然界を参考にする

 順を追ってその詳細を説明していきます。