パワー半導体の分野で、SiCやGaNなど化合物半導体系の材料を使った製品開発が活発化してきた。今回のSCR大喜利では、「パワー半導体の技術マップを探る」と題し、デバイスの材料を軸としてパワー半導体事業の先行きを見通していただいている。今回の回答者は某半導体メーカーの清水洋治氏である。



清水洋治(しみず ひろはる)

某半導体メーカー
 某半導体メーカーで、(1)半導体の開発設計、(2)マーケット調査と市場理解、(3)機器の分解や半導体チップ調査、(4)人材育成、という四つの業務に従事中。この間、10年間の米国駐在や他社との協業を経験してきた。日経BP半導体リサーチにて、半導体産業に関わるさまざまなトピックスを取り上げつつ、日本の半導体産業が向かうべき方向性を提起する連載コラム「清水洋治の半導体産業俯瞰」を連載中。

【質問1】パワー半導体でSi系、SiC系、GaN系の棲み分けの構図は、将来も続くのか?
【回答】棲み分けは当面続くと思われる

【質問2】複数材料系のデバイスを同時開発するメーカーについて、事業のシナジー効果が望めると考えるか、それとも戦力分散を招く可能性が高いと考えるか?
【回答】事業シナジーは起こりうる

【質問3】材料系を絞って技術開発を進めるメーカーは、継続的に事業を営むために市場の開拓・維持をどのように進めるべきか?
【回答】圧倒的マスはBRICsに

【質問1の回答】棲み分けは当面続くと思われる

 パワー半導体でもっとも重要な性能は「効率」である。効率だけを求めれば確かに一本化はあり得るかもしれない。しかしコスト、不良率など効率だけで測れない部分もある。このため、一本化は、かえって製品の幅を狭めてしまうと予想する。

パワー半導体には多くの設計ノウハウがあって、ノイズをどうするか、カップリングをどうするかなど、設計とプロセスの一体化で性能を達成できている。デバイスだけあれば、だれでも同じ性能を出せるという単純な世界ではない。市場が要求する性能を「設計」「デバイス」「製造」で三位一体となって供給できることが最も重要で、Si系、SiC系、GaN系という分類は、実際の市場からは見えない部分。三位一体となって、市場要求に応えられる限りは、棲み分けは当面続くと思われる。ニッカド電池、リチウム電池も棲み分けができているように。