通勤列車をいかに快適に過ごすか。これは、仕事のモチベーションを左右する重要な“ミッション”です。しかし、現実はそう甘くありません。夏の朝、最寄り駅のホームで既に汗ばんでいるような日に限って、いつも乗る車両の冷房がほとんど利いていない。あるいは、運良く座れた日に限って、冷房が利きすぎていて寒くてたまらない。今年の夏も、このような経験をたくさんしました。

 みんな我慢しているのだから、私も我慢すればいいのかもしれません。でも、こう思うのです。もし私が乗ろうとしている列車の、車両ごとの混雑状況や温湿度などを事前に知ることができたら、快適な車両を自ら選べるのに、と。このようなスマートフォンアプリがあって、しかも乗換案内アプリと連動していれば、使い勝手も良いと思います。

 これは、利用者だけではなく鉄道会社にとってもメリットがあります。まず、混雑を平準化できます。さらに、列車の混雑状況のデータを蓄積・分析すれば、沿線の通勤環境の傾向も見えてきます。その情報があれば、利用者に対して「見知らぬ都市に出張した際、どの駅のホテルに泊まれば快適に移動できるか」や「新居をどの沿線に構えれば、快適に通勤できるか」といった判断材料を提供できます。通勤のしやすさを具体的な数値で示せれば、沿線価値を高めてライバル会社に差を付けることも可能でしょう。

 この話で重要なのは、既に存在している「センサー」を生かし、それをインターネットにつなげて、当初センサーを設置したときとは別の目的でデータを活用することです。我々の周りを見渡せば、スマートフォンや自動車、建築物など、社会のありとあらゆる所にセンサーが入り込んでいます。これらのセンサーを使って、新しいサービスを生み出すわけです。