再生可能エネルギー(再エネ)由来の電力を買い取る「固定価格買い取り制度(FIT:フィードインタリフ)」の在り方を巡る議論が活発化している。

 同制度の課題としてよく指摘される論点は、第一に割高な買い取り価格を電気利用者全体で負担する仕組みのため、再エネ導入量が増えるに従い、電気利用者の負担が増えていく点が挙げられる。

 第二に、産業政策として見た場合、低価格の海外製装置や部品が多く使われ、自国の製造業が育たないという批判も多い。後者の例として、FIT先進国のドイツでは、太陽光ベンチャーとして急成長した地場のQセルズが、中国製に押されて経営に行き詰まり、最終的に韓国のハンファに買収されたことがよく引き合いに出される。

 実際に、他国の資本が入っていないドイツの太陽光パネルメーカーは、ソーラーワールドしかないのが現状だ。しかし、太陽光パネルメーカーの動向だけを見ていると、FITによって成長した太陽光発電産業全体の市場性や業界構造を見誤る。

 実は、ほとんどコモディティー(汎用品)化した太陽光パネルを除けば、大規模太陽光発電所(メガソーラー)のSI(システムインテグレーション)やEPC(設計・調達・施工)サービス、架台、パワーコンディショナー(PCS)など、太陽光パネル以外の多くの関連分野で、ドイツ企業が世界市場でシェアを高めている。そして、太陽光発電所の建設コストの約6割をこうしたパネル以外の設計工事、架台、PCSなどの費用が占めている。

「日本企業にはないコスト競争力を持つ」

 「我々は、ドイツやスペインで、すでにFITの買取価格の低下を乗り越えてきた経験がある。日本企業にはないコスト競争力を持っている」。ドイツIBCソーラーのプロジェクト事業部門でシニアバイスプレジデントを務めるホゼ・ロピス氏はこう強調する。

 同社は、太陽光発電のSI、EPCサービスを世界各地で展開し、これまでに2.5GW(ギガワット)を手掛けた実績がある。2014年5月に日本市場への本格進出を決め、すでに3カ所でメガソーラーの建設を進めている。

 日本のFITの買取価格は、当初の40円/kWh(税抜き)から2013年度に36円/kWh、2014年度には32円/kWhに下がった。国内EPCサービス会社の中には、「32円案件」は手を出さないという声も出てきた。

 買取価格40円/kWhと36円/kWhで設備認定を得たメガソーラー案件の建設コストの相場は出力1MW当たり約3億円だった。32円/kWhまで下がると同2億円近くまで下げないと事業性が確保できないと言われる。建設コストを3分の2に下げるのは容易ではない。

 しかしロピス氏は、「日本での32円/kWhの買取価格は、十分に事業性を確保できる水準だ」と自信を見せる。同社は、太陽光パネルについては独自に品質基準を作り、海外メーカーに生産委託した「IBC ソーラー」ブランド品を使っている。そのほかの設備資材の多くは、「ドイツメーカーが中国などで生産し、低コストだが、“ドイツ品質”を維持した製品を採用している」と打ち明ける。