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 美しい女性とVR(仮想現実)――。これが日経エレクトロニクス2014年9月29日号の表紙のモチーフです。若い女性が、米Oculus VR社のヘッドマウントディスプレー(HMD)「Oculus Rift」を身に着けています(そのため顔は全部見えませんが)。9月29日号の特集に合わせて、今回の表紙を採用しました。

 特集のテーマはVR。これまで特別な装置が必要だったVRシステムが、グッと身近になりました。VRには縁遠そうに見える人も利用するほど、将来はVRが身近になる。そんな思いを表紙に込めました。

 現在VRは、1960年代、1990年代に続く第3次ブームの入り口にいます。牽引役はゲームです。その中心にあるのは、表紙にも採用したOculus Rift。現在開発者向けのバージョンが販売されていますが、価格は300~350米ドルとVR用HMDとしては割安です。3Dゲームをプレーできるパソコンと接続すれば、VRゲームを楽しめます。Oculus Riftの登場後、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が、PS4と接続するVRシステム「プロジェクトモーフィアス」を2014年3月に発表。Oculus Riftとともに注目を集めています。

 2014年9月18~21日まで開催されたゲーム業界で世界最大級の展示会「東京ゲームショウ 2014」でも、Oculus Riftやモーフィアスを利用したVRゲームに多くの来場者が詰めかけました。さらに、スマートフォン「GALAXY Note 4」と組み合わせて利用する簡易型のHMD「Gear VR」をサムスン電子ジャパンが日本で初出展し、注目を集めました。

 詳細は特集記事をお読みいただければと思いますが、ゲームを起点にして、さまざまな分野でVRシステムが利用されるようになる。そう考えながら記事を執筆しました。

 では、VR業界における開発目標は何か。一言で言うと、「『プレゼンス』の実現」です。これは、あたかも仮想空間に自分が存在するかのように思い込んでしまう状態を指します。映像や音の表現は、現時点でも相当リアルになってきました。操作技術に関しても、ジェスチャー入力コントローラーや視線入力技術などの性能が向上し、コストも従来よりもだいぶ安価になりました。

 現在不足しているのは、「触覚」です。VRコンテンツを体験した多くの人が、「手を伸ばして仮想空間内の物体に触れようとする」そうです。そのとき、仮想空間内の物体との何らかのインタラクションをユーザーに与えることが必要になります。映像や音の処理である程度表現できると思いますが、やはり「触った感覚」は欲しいもの。2014年9月に開催されたゲーム開発者会議「CEDEC 2014」でも、触覚提示技術の発表が増え、多くの参加者が詰めかけ、関心の高さが伺えました。

 9月29日号の特集では、触覚提示技術の最新動向も取り上げました。ご興味がある方は、ぜひご一読いただければ幸いです。