自分のやりたいことを選ぶ

 COJTの最大の特徴は、ゴールが設定されていないことです。ゴールは、受講者が自ら決めます。つまり、「自分のやりたいことを選ぶ」ことがCOJTのポイントです。

 本稿の最初に示したように、制作の環境は非常に充実しているので、実現できるシステムの可能性は無限大です。その中から、自分の技術力や興味を考慮して、限られた期間で完成できそうなものを選ぶ。これこそが、COJTの最も重要な要素になっていると思います。

 大学3年生ともなると、ものづくりの基礎が身に付き始めることもあり、往々にして「あれもやりたい、これもやりたい」と思いがちです。実際に私もそうでした。いろいろなものに興味を持つこと自体は悪くないのですが、ある程度の年齢になると、そこから何かを選ぶことがとても重要になってくると思います。なぜなら、自分が学生でいられる期間は限られているし、どれだけ時間をかけてもやりたいことのすべてを極めることは不可能だからです。

 だからこそCOJTでは、他にやりたいことや楽しそうなことがあっても、自分にとって一番大切なもの以外は捨てる必要が出てきます。これは、やりたいことの選択というよりは、やらないことの選択といった方がイメージ的に近いかもしれません。また、そうやって自分にとっての一番を選び、頑張ればこそ、作られた作品は「自分が作りたいものを作るために頑張った」という目的意識というか、内心より駆動される自分の意思が現れたものになっていると思います。

ありのままの自分をみること

 COJTのもう一つの特徴は、自分の作ったシステムを発表する場があることです。具体的には、自分の作品を大学内外の多くの人に売り込むための発表会が、ハードウェアコースの場合は年度末に、ソフトウェアコースの場合は春学期および秋学期の期末に開催されるのです。

発表会の様子
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 自分の作りたいものを作りたいように作ったその作品は、単に自分の技術力だけでなく自分の好みや美的センスなど、まさに各受講生の自分自身のありのままを表しています。これを大学の内外の方にプレゼンテーションすることは、作品を通して自分の作品の長所や短所が見えてくるきっかけになります。また、それを実際に他者に伝えることで、自分の中のおぼろげな自己イメージをより客観的に実体化できる効果があるように思います。

 これまでには、サークル活動等が忙しくて実験に注力できず、思い通りのものを作れなくて、課題の一部をなんとか改良して面白く見えるようにした例もありました。それは必ずしも悪い作品ということはなく、それもまた自分自身の性格や意思を素直に表したもので、そこから自分自身の生活や今後の進路などを考えるきっかけになっていたように思います。