文部科学省の平成25年度学校保健統計調査によれば、小学校児童で虫歯のある者(処置済みを含む)は1983年度には実に92.61%に及んでいたが、2013年度には54.14%にまで減少したという。しかし1983年の小学生以上、すなわち現在30歳代以上の大人はまだ虫歯の多い世代であり、歯周病の危機が増す年代へとなりつつある。まだまだ治療の必要は多く、技術の向上が望まれる。

 その1つとして、虫歯の治療に使う冠(クラウン)などの補綴物(ほてつぶつ)をコンピューターシステムで製作する技術により、精度の向上と製作時間の短縮を図ることができる。このアイデアは1980年代からあったにもかかわらず、日本国内ではほとんど普及していなかった。ところが2014年4月の「平成26年度診療報酬改定」によって、突然保険診療の対象になり、現在このコンピューターを用いた治療が可能な歯科医院が増えつつある。

図1●「MEDTEC Japan 2014」(2014年4月)でデータ・デザインが展示した装置
図1●「MEDTEC Japan 2014」(2014年4月)でデータ・デザインが展示した歯科用の装置
カナダDentalWings社製の3Dスキャナー(右)とローランド ディー. ジー.製の3D加工装置(左)
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 コンピューターシステムの仕組みと技術は、製造業で機械部品の加工に用いるCAD/CAMシステムと同じだ。まず、削った歯の3D形状にぴったりはまるよう、冠の形をコンピューターで設計する。できた3Dの設計データを基に切削加工機を動かす。CAD/CAMを歯科に応用したことから、システムは「デンタルCAD/CAM」と呼ばれる。

 平成26年診療報酬改定で保険診療の対象になったのは、小臼歯(第1、第2小臼歯=4番、5番)にかぶせる冠で、審美性の高い白いハイブリッドレジン(樹脂とセラミックスの混合物)製のもの。保険が適用になる白い材料は、これまで前歯(切歯と犬歯、1~3番)用に限られていた(レジン)ところを、2014年から適用が拡大したことになる。ただし、小臼歯の治療に白い材料を用いて保険適用になるのは、ハイブリッドレジンをCAD/CAM装置で削った冠(CAD/CAM冠)に限られる。つまり、CAD/CAMを使わないでハイブリッドレジンで歯の形を造っても、それは保険適用の対象ではない。

* 永久歯は、一番前の歯から数えて1番、2番と呼ぶ。親知らず(第3大臼歯)は8番。

 小臼歯は切歯や犬歯ほどではないにしても、外から見えやすい。従って保険が利くのであれば、金属材料(いわゆる銀歯)よりも白い材料での治療を希望する患者は多いと考えられる。このため、歯科用に適合するCAD/CAMシステムを販売するベンダーは特需に沸いており、例えばデータ・デザイン(本社名古屋市)は「2014年1~3月の段階で、2013年の1年間よりも多い台数を売った」という(図1)。