図版説明
SEMIジャパン 代表 中村修氏

 半導体関連産業において装置メーカーや材料メーカーが集う国際的な工業会であるSEMI。日経テクノロジーオンラインはSEMIの日本の拠点であるSEMIジャパンと協力し、半導体関連情報を発信するSEMIジャパンのコラムを開設した(SEMIジャパンのコラムはこちら)。今回の本コラムでは、SEMIジャパン代表の中村修氏に登場していただく。日立ハイテクノロジーズ出身の中村氏は、2014年7月1日付で新代表に就任したばかり。同氏は日本の半導体産業を活性化させるべく、積極策を打ち出す考えだ。
 中村氏に、半導体産業の状況や日本の位置付け、そして活性化策の第一弾として刷新を図る半導体関連の展示会「SEMICON Japan」の注目ポイントを聞いた。(大久保 聡=日経BP半導体リサーチ)

――半導体市場の見通しを聞きたい。

中村氏 半導体市場は右肩上がりの成長が続いている。年平均4~5%程度で成長してきたが、二桁成長に手が届きそうな勢いがある。このように半導体市場の成長が予想されている背景には、半導体のアプリケーションがますます拡大していくことがある。今後、半導体を使っていない産業を探す方が一層難しくなっていく。

 電子産業のエコシステムは、逆三角形型になっている(図1)。最上層にある電子機器市場が拡大すればするほど、その前の層に位置付けられる半導体業界の市場が引っ張られる形で大きくなっていくのだ。

図1 電子産業のエコシステム(図:SEMIジャパンの資料)
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 こうした産業拡大の牽引役になるのが、今トレンドになっているIoT(Internet of Things)関連機器であるとみている。IoTは、自動車とか医療/ヘルスケアル関係など、人間が生活する中で不可欠なところに関わる。こうしたところで用いられる機器が半導体需要を牽引していくだろう。

――半導体の生産能力の増強も必要になるのか。

中村氏 IoT関連機器などが牽引して電子機器市場が拡大するためには、その拡大を下支えするように半導体業界は製品を生産していかねばならない。生産能力を増強するとなると、半導体を製造する装置がさらに必要になってくるし、材料供給も増やさねばならない。

 ここで、ぜひ着目してほしいのが、日本国内に立地する半導体工場の生産能力だ。実は日本の半導体生産能力は世界の中で最も大きく、8インチ(200mm)ウエハー換算で月産400万枚もある(図2)注1)。日本の機器メーカーはここに注目してほしい。ロジスティクスなどのコストを考えても、日本に立地する半導体工場を活用するのはとても有利になるだろう。

注1)外資系企業が日本国内に保有する半導体工場を含む。

図2 日本の生産能力の特徴は多様性(図:SEMIジャパンの資料)
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――生産能力やロジスティクスだけで、日本に立地する半導体工場が有利と言い切れるのか。

中村氏 有利といえる理由は他にもいくつかある。その最たるものが、日本に立地する半導体工場で生産されるデバイスの種類の多様性だ(図2)。IoT関連機器が半導体市場を牽引するこれからを考えると、この多様性は今後のトレンドに対応できる能力があるといえる。

 ウエハーの口径別で日本の半導体生産能力を見てみると、300mmウエハー工場では世界シェア2位だが、200mmウエハー工場では同1位である(図3)注2)。200mmウエハーを取り扱い、しかもデバイスの多様性がある半導体工場は、今後のトレンドにおける半導体需要拡大に対応できる大きなポテンシャルを持っている。

注2)外資系企業が日本国内に保有する半導体工場を含む。

図3 日本の半導体生産能力(図:SEMIジャパンの資料)
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 ただ、そのポテンシャルを生かすには、これからの技術トレンドに応じて生産設備を対応させるための投資が必要だろう。クリーンルームの清浄度を上げるとか、新たな装置を導入するとか、中身を刷新して工場のグレードアップを図ることが求められる。

――IoT時代が半導体市場を牽引していく今後を考えると、日本は良いスタート地点にいるということか。

中村氏 まさに今、IoTによるエレクトロニクス産業の拡大が期待される中、日本の持っているポテンシャルが生きるトレンドに入ってきたといえる。

 これまで、日本の半導体ユーザーはコストを追求したときに、やれ台湾だ、韓国だ、中国だ、というように、日本以外に生産委託する傾向があった。現在もその傾向は強い。だが、IoT関連機器に数多く使われるであろうデバイス、つまり多様性を追求される生産技術で製造するデバイスが必要になってくると、必ずしも単純にそうはいかなくなってくる。

 半導体業界は半導体ユーザーの方々がこうした状況の変化に目を向け、再び日本の半導体工場を活用する動きに結び付けていく流れを作っていく必要がある。