このところ、医療機器関連のソフトウエアに関わる議論が熱を帯びてきた。一つは、2014年11月25日施行の改正薬事法から我が国では初めてのソフトウエア規制がスタートすること、もう一方で医療機器を含めたヘルスソフトウエアの開発ガイドラインが示されたことが背景にある。本稿では、規制と開発といういわば相反する両極面から、近未来のヘルスソフトウエアが示唆する展望と課題についてコメントしておきたい。

歓迎される“開発ガイドライン”

 2014年7月、経済産業省主導により「医療用ソフトウエア分野 ヘルスソフトウエア開発に関する基本的考え方 開発ガイドライン 2014」というガイドラインが提示された。規制ではなく「標準化」や「業界規格」という視点からの考え方に位置づけされるものだ。

 内容を俯瞰してみて、いくつかの特徴があり、注目に値する点もあることに気づいた。第一印象をいうなら、はじめて「ヘルスソフトウエア」「医療機器ソフトウエア」などの概念や定義が示されたことの意義が大きい。というのは、こういったターム自体が提示されるのも最初のことで、これまでに公的な場で発表されることはなかった。概念的には誰もが抱いていた事項ではあるが、改めて「定義」が示されたことに意味がある。

 以下は、ガイドラインの冒頭に示されている「表1へルスソフトウエアの特徴」と題する分類表である。

へルスソフトウエアの特徴(経済産業省の「医療用ソフトウエア分野 ヘルスソフトウエア開発に関する基本的考え方 開発ガイドライン 2014」から抜粋)
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 この表が今回のガイドラインの全貌を象徴的に表現しているといえよう。2014年11月25日から施行されるソフトウエアの規制に先立って、最低限ながらも、その対象と対象外の区別けが存在することを示唆している。

 これまでの法律では、まったく触れられていない“法規制対象外のヘルスソフトウエア”という新規分野にも踏み込んでいる点が最大の注目点だ。現薬事法と改正薬事法では、この部分について何一つ言及していない。あたかも「触わらぬ神に祟りなし」というか、責任逃れといわれても仕方がないだろう。

 ところが、本ガイドラインでは「ヘルスソフトウエアガイドライン(GHSガイドライン)」を独自に策定して、いわば無法状態だった領域にも新規のガイドラインを創り上げたのである。