IR社買収の狙いの1つに、GaN-on-Si技術の獲得があったと語るInfineon社のArunjai Mittal氏(Member of the Management Board Resions, Sales, Marketing, Strategy Development and M&A)
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 GaN(窒化ガリウム)は、LEDやパワーデバイス、高周波トランジスタなどに使われる半導体材料である。今、この材料を用いた半導体デバイスをSi(シリコン)基板上に作製する「GaN-on-Si(ガン・オン・シリコン)」技術が注目を集めている。LEDやパワーデバイスの大幅なコスト削減につながるからだ。

 一般に、半導体デバイスは基板(母材)上に半導体薄膜を成膜して作る。この際、半導体薄膜と基板が同じ材料であれば、両者の格子定数(原子間の間隔)が同じであるため、単結晶と呼ばれる原子が規則正しく並んだ高品質の半導体薄膜を作ることができる。結果として、半導体薄膜の電気的特性や光学的特性が高まり、性能の高いデバイスを実現できる。

 GaNは優れた電気・光学特性を備える材料ではあるものの、現状では安価で大口径のGaN基板が実現していない。このため、例えばLEDではGaNと格子定数が比較的近い材料であるサファイアを基板に使っている。

 これに対し、大規模集積回路(LSI)の母材として広く普及しているSi基板を使うことで、LEDやパワーデバイスのコストを劇的に下げようというのがGaN-on-Si技術のコンセプトである。恩恵は単にコストを低減するだけではない。巨大産業に育ったLSIで培われてきたSi技術を取り入れて、デバイスの性能や生産性を高めたり、さまざまな電子回路を同一基板に集積して“システム化”するといった、新たなアプローチが可能になる。