硬い、遅い、補助金頼みという、これまでのイメージを覆す自治体の先進的な取り組みを紹介する「いいね!自治体」。今回は大阪市を取り上げる。グランフロント大阪に拠点を設け、大阪から継続的にイノベーションを生み出し、世界へ発信することを目指している。(リアル開発会議)

 自治体の企業支援といえば、中小企業への補助金を主とするものが多い中、一線を画した施策を展開しているのが、大阪市である。ものづくりをイノベーションにつなげる環境を構築するため、新しい事業プロジェクトを創出・支援する“場”の提供を始めた。2013年4月、グランフロント大阪にある知的交流拠点「ナレッジキャピタル」内に設けた「大阪イノベーションハブ」がそれだ。

 大阪市がなぜイノベーションなのか。きっかけは、10年ほど前に遡る。2004年に大阪市は「大阪駅北地区まちづくり基本計画」を策定した。この計画を基に始まったのが新しいまちを官民でつくる「うめきたプロジェクト」である。商業施設やオフィスだけにとどまらない、魅力あるまちづくりを進めることが目的だ。プロジェクトの検討で行き着いた先がイノベーションの創造拠点だった。

 大阪イノベーションハブを所管する大阪市経済戦略局でイノベーション担当部長を務める山口あをい氏の経歴が興味深い。もともと福祉部門を経て計画調整局という部署で総合計画を担当していたが、ハコモノだけではなくソフトを重視するまちづくりを進めるということで、白羽の矢が立ち、うめきたの再開発プロジェクトに関わることになった。

大阪市経済戦略局 イノベーション担当部長の山口あをい氏(写真:宮田昌彦)