前回から、10代から20代前半の若者の強力な支持を獲得している人気のライブ動画配信サービス「ツイキャス」を取り上げています。スマートフォン(スマホ)のカメラを使って手軽に、無料で動画の生中継ができるサービスです。既にユーザー数が750万人を突破し、海外ユーザーも増えています。

 前回は、このサービスを運営するモイ(東京・千代田区)の社長で開発者の赤松洋介氏の経歴や考え方、ツイキャスを開発するまでの道のりを追いました。その中で見えた、ヒットの要諦は次のようなものでした。

■前回の「ヒットの要諦」
その1:
面白いと思ったら躊躇せず、打席に立つ回数を増やせ!
その2:
自分が面白いと思えるサービスを開発せよ!

  面白いと思ったら、とにかくつくってみる。そんな姿勢を続けたことが、ツイキャスの開発につながりました。

 サービス開発後、ツイキャスのユーザー数は着実に増えていきます。開始から約10カ月後の2010年末までにユーザー数が25万人を突破。さらに1年後の2011年末には75万人までに増加し、2012年末に175万人に達しました。そのころから増え方が急カーブを描くようになります。2013年末に400万人、2014年5月に600万人を超えました。

 あまり苦労を苦労のように話さない赤松氏は、ユーザー数の増加についても「何だか、そうなっちゃいました」という感じで飄々と語ります。しかし、よくよく話を聞いてみると順調なユーザー数拡大の裏側には、かなり地道な活動や、重要な分岐点となる意思決定が隠れていました。今回はサービスのリリース後に焦点を当てて、ツイキャスのヒットの要諦に迫ってみたいと思います。

100万人を目標に続けてみよう

 サービスをリリースした2010年の年末にユーザー数が25万人を超えたころに赤松氏は、「とりあえず100万人を目標として、もう少し続けてみよう」と思っていたそうです。別の収益源があり、必要なサーバーや通信回線の費用がある程度想定の範囲内だったことが大きかったようです。

 しかし、ユーザー数が100万人を突破した2012年前半に転機が訪れます。その時点で赤松氏の頭に浮かんだ選択肢は「どきっ」とする内容でした。