覇権交代が激しいネットサービスの世界で、ユーザー数を伸ばしている動画のライブ配信アプリ(アプリケーション・ソフトウエア)があります。ユーザー数が750万人を突破した「ツイキャス」というアプリです。最大の特徴は、スマートフォン(スマホ)のカメラを使って手軽に、無料で動画による生中継が可能であること。日本発のアプリサービスながら、海外のユーザーが多いことも注目に値します。

 国内では、10代から20代前半の若者、スマホを使うのが当たり前の「スマホネイティブ」を中心に人気を集めているサービスです。中学生、高校生、大学生の1/3以上が日常的に利用しているといいます。

モイのライブ動画配信サービス「ツイキャス」(画像提供:モイ)
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 今回は、このツイキャスがヒットするに至った経緯に迫ってみます。ユーザー数を拡大するスマホ生中継サービスは、どんなきっかけで開発されたのか。その秘密の扉を開いてみましょう。

とにかく根っからの技術者

 ツイキャスは、モイ(東京都・千代田区)というベンチャー企業が運営しています。同社の社長でソフトウエア技術者の赤松洋介氏が開発したサービスです。

 実際に赤松氏と会ってインタビューした印象は、インターネット業界のベンチャー経営者という“いかにも”な社長像とはだいぶ違うものでした。

 赤松氏は、自分自身のことを「とにかく根っからの技術者」だと分析しています。中学生のころには既にパソコン少年で、パソコン専門誌に寄稿し、お小遣いを稼ぐような少年だったようです。とにかく何かにハマりやすい性格で、大学時代の趣味はクルマ。大学院を修了して大手システム会社に就職し、その後、すぐに米Stanford Universityの客員研究員になっています。Stanford時代には、米Google社の創業者が在籍した研究プロジェクトにも参加していました。

 赤松氏には、この華麗な経歴から想像できそうなガツガツした印象がありません。とても飄々とした雰囲気で、受け答えもあっさりとしています。しかし、さも当たり前のように話す語り口とは裏腹に、聞いた話をよくよく考えてみるとかなりのすごさや苦心が隠れているのです。苦労をあまり表に出さない人物なのでしょう。 

 技術者として新しいものをつくりたい。そして、それを流行(はや)らせたい。そんな思いが強いのだそうです。帰国後は独立系のソフトウエア会社に転職し、それから数年で独立。サイドフィードという会社を立ち上げました。