ソフトバンクの孫正義会長が2014年8月20日朝、頭から氷水をかぶった。体の自由が利かなくなる難病「筋委縮性側策硬化症」(ALS)の認知を高めるためのチャリティーキャンペーン「アイス・バケット・チャレンジ」で、指名を受けた人は支援団体に100米ドルを寄付するか、氷水をかぶるかし、さらに次の挑戦者を指名していくというもの。汐留のソフトバンク本社で子供用のビニールプールに入った孫氏がバケツで氷水をかぶりずぶ濡れになる姿をニュースやネットの動画で観たという読者も少なくないだろう。

 孫氏を指名したのは、当コラムにも度々登場するEMS(電子機器受託生産)世界最大手、台湾Hon Hai Precision Industry社〔鴻海精密工業、通称:Foxconn(フォックスコン)〕のトップ、郭台銘董事長だ。孫氏が挑戦した前日の19日、台湾新北市土城のフォックスコン本社で氷水をかぶった郭氏は、併せて31万米ドルの寄付もしている。

 この孫氏と郭氏、今年6月には東京で揃って舞台の上に立っている。ソフトバンクが発表した人型ロボット「Pepper」の発表会で、製造のパートナーとして登壇。孫氏は質疑応答で、両社の関係がYahoo!BBのモデムなどの生産委託など昔からの付き合いだとした上で、「量産を世界で一番得意とするのでフォックスコンを選んだ」「ロボット事業への本格参入には、フォックスコン以外では考えられなかった」として、郭氏とフォックスコンに対し絶大な信頼を寄せていることを強調した。これに対して郭氏も「世界を変えるような一日を一緒に迎えることができて光栄だ」「孫社長の考えに追いつこうとやってきた」と孫氏を持ち上げた。

 こうして孫氏およびソフトバンクが郭氏との親密ぶりを印象づけたのとは対照的に、郭氏やフォックスコンとの冷えきった関係が露呈した日本の企業もある。それはシャープだ。

 伝えたのは『日経ビジネス』。2014年7月28日号で、シャープの高橋興三社長のインタビューを掲載しているのだが、経営危機の中で資本提携を進めたシャープ、米Qualcomm社、韓国Samsung Electronics社との関係についてシャープの高橋社長は、Qualcomm社、Samsung Electronics社との提携は順調であり、うちQualcomm社とは新型ディスプレーの共同開発が佳境を迎えつつあるとコメント。その上で、フォックスコンとの提携については、協業が進展しておらず、フォックスコン側からのアプローチもないため、さらなる大型提携の可能性はないと強調したのだ。