近年、自動車の事故率低減を目的に、安全運転支援システムの搭載例が増えている。同システムを構成する代表的なデバイス/機器に、車載カメラやセンシングシステムがある。「ぶつからないクルマ」に対するユーザーの認知度も以前に比べて格段に高まってきた。

 安全運転支援システムの浸透に伴い、自動車が取得する情報を効果的にドライバーへ伝えるための仕組み作りが急務となっている。その構成要素としては、メーターディスプレーやカーナビゲーション、ヘッドアップディスプレー(HUD)が挙げられる(図1)。以下では、Infotainment分野におけるセンターディスプレー、安全運転支援分野におけるヘッドアップディスプレーについて、それぞれの市場の動向を解説しよう。

図1●車室内におけるディスプレー搭載箇所と目的
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センターディスプレー市場を変えたスマホ

 Infotainment分野の表示機器には目下、大きな変化が生じている。従来は、車室内のセンターディスプレーとしてカーナビゲーション機能を備えたディスプレーを設置することが多かった。ところが、2012年を境にディスプレーだけを搭載する傾向が顕著になっている。

 そこで我々は、センターディスプレーをCar NavigationとDisplay Audioの2つに区別している(図2)。両者の主な違いは、NaviBoard(すなわちNavigation機能)の有無である。2013年におけるセンターディスプレー市場の数量規模は約3750万台。内訳は、Car Navigationが約1930万台、Display Audioが1820万台である(図3)。スマートフォンの普及に伴い、中央部のディスプレーにDisplay Audioを搭載してスマートフォン内のデータを表示することで、ナビゲーション機能を代用する方向へシフトしつつある。

図2●センターディスプレー市場の分類
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図3●センターディスプレー市場の将来予測
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 センターディスプレー市場では、新しいディスプレー活用法としてセンターコンソールが検討されている。センターコンソールは、主に車室内のエアコンやCD/DVDなどの各種メディアを制御している部分を指す。センターコンソールのディスプレー化ではタッチパネル機能が必須だが、現時点では入力感度の向上が課題である。

 この他、車室内におけるディスプレーの新たな設置場所として、ルームミラーが注目されている。米国地域では、駐車時の自車後方確認を目的としたカメラの設置義務化(Cameron Gulbransen Kids Transportation Safety Act:KT法)が近く予定されている。これに対応するために、ルームミラーをディスプレー化してカメラ取得情報を表示する方法が検討されている。

 ディスプレーを搭載したルームミラーは既に普及しているが、画面サイズがまだ小さい。カメラ画像の視認性向上に向けて、全面ディスプレーの採用が検討されている。日本では、自車後方のカメラ画像表示は主にセンターディスプレーが担っている。対して、KT法が施行される米国地域ではCar Navigationの普及率が15%程度と低いことから、ミラーディスプレーが普及する可能性が高い。また、全面ディスプレーの採用によって新たな活用法が生まれることも期待される。