局地的な集中豪雨による災害が相次いでいる。8月20日未明、広島市北部を襲った豪雨は、土砂災害の甚大な被害をもたらした。

 広島市の豪雨は「バックビルディング型」という気象現象が原因とみられている。この現象は、暖かく湿った空気が流れ込み、ビルが並ぶように積乱雲が一列に発生するものだ。特定の場所で積乱雲が発生し続け、上空の風に流されて積乱雲が移動、別の場所で雷を伴う強い雨を降らせる。2013年7月に山口県と島根県で、同8月に秋田県と岩手県で大きな被害をもたらした豪雨もバックビルディング現象によるものとの見方が強い。

広島市で起きたバックビルディング現象。WNIによる分析。(画像:WNI)

 気象情報大手のウェザーニューズ(WNI)は、「豊後水道を通って日本海側に停滞する前線に向かって広島県と山口県の県境に流れ込んだ湿った南風が丘陵部にぶつかり、上昇気流となって積乱雲を発生させた」と分析している。上空1500m付近で吹いていた南西風が原因となって積乱雲がさらに発達し、北東方向へと進んだ。これが風下側の広島市北部で長時間にわたる局地的豪雨を引き起こしたという。

 防災科学技術研究所(NIED)によれば、8月19日午後6時から同20日午前6時までの12時間に200mm以上の雨が降った地域は、南西から北東に向かって長さ約23km、幅5kmに帯状に分布していた。土砂災害が発生した安佐南区と安佐北区の周辺では12時間の雨量が250mmを超えたと推定している。同研究所やWNIはいずれも、次々と発生した積乱雲が最大で高度15kmまで発達したようだと公表した。

 ただ、バックビルディング現象に代表される局地的な豪雨は発生を予測することが難しい。ピンポイントで生じる気象現象に対応するには、既存の気象観測網を格段に密でリアルタイム性の高いものにする必要があるからだ。

 広島市の豪雨被害の後には、政府が産官学の連携で突発的な自然災害を早期予測するシステムの構築に乗り出すとの報道もあった。確率高く発生を予測できれば、豪雨到来に身構えることができる。被害の軽減に向けて、ここにきて局所的な豪雨、いわゆる「ゲリラ豪雨」の予測精度を高める取り組みが官民で本格化している。