ITを活用した保守サービスの例としては、コマツが導入したKomtraxではブルドーザーやダンプカーなどの重機の情報をインターネットを使って取得することで、車両の状況のみならず、工事現場の人員の勤務状況がわかります。さらに、重機の稼働状況から鉱山など工事を行っている地域の経済状況までも把握することができると言われています。

 GEの例では、航空機のエンジンの動作状況をリアルタイムにモニターし、飛行履歴なども参照しながら事故につながる故障要因を事前に発見し、整備にフィードバックするといった取り組みが行われています。

 このような製造業のITへの活用は第4の産業革命とも言われています。「ドイツが目指す第4次産業革命『Industry 4.0』」(関連記事)によると、第1次産業革命が18~19世紀に起きた、水力や蒸気機関による工場の機械化、第2次産業革命が19世紀後半に進んだ電力の活用、第3次産業革命は20世紀後半に生まれたプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)による生産工程の自動化(オートメーション化)です。

 第4の産業革命とも言える製造業へのITの適用で日本企業は生き残ることができるのでしょうか。IT活用、デジタル化は諸刃の剣でもあります。ITは製造の低コスト化や簡素化を実現する半面、製品や製造プロセスのコモディティー化をもたらすこともあるのです。

 例えば、動画を撮影・記憶するデジタルビデオカメラはデータの記憶媒体として磁気テープを使っていました。磁気テープを小型のカメラに収納するには複雑な機械的な機構が必要で、製造できるメーカーはソニー、キヤノンなど世界で数社に限られていました。それが、記憶媒体がフラッシュメモリになった途端に、誰もが比較的簡単に製造できるコモディティーになってしまったのです。

 匠の技の日本の製造業もIT化の波に飲み込まれてしまうのでしょうか。どの分野もIT化は必然でしょうから、日本の製造業が生き残るための方策を積極的に考えていくべきでしょう。海外の企業に飲み込まれる前に、こちらが飲み込む方法を考えるのです。