これがサイバニック随意制御の原理です。
たとえば、HALを横に置いた状態で身体に不自由のある方の皮膚表面にセンサだけを貼りつけます。人とHALが線だけでつながっている状態ですが、その人が身体を動かそうとすると、実際には装着されていないにもかかわらず、HALがその意思に合わせて動くのです。それだけでも非常に不思議な感じがしますが、つぎにHALを実際に装着すると、さらにおもしろいことが起こります。
先ほどのHALが今度は装着者の動作意思に従って人間の身体を動かすのです。人と一体となって動くわけですね。そうすると、人の身体には感覚神経系が備わっていますから、自分がどのように動かされているかという情報がすべて脳に戻ってくるわけです。これによって、自分の意思によって筋肉の代わりに動いてくれるロボットができあがり、そしてどのように動いているかという情報もすべて自分に戻ってくるという、世界で初めて人間とロボットが一体化する技術ができあがったということになるわけです。
つぎに、もう一つの制御方法であるサイバニック自律制御について説明します。これは人間の諸特性をある程度持ったロボット的制御系になっています。たとえば、神経系の信号が十分でない場合にも、重心移動などを感知して動作を先読みする補助的な仕組みを併せ持っています。
HALには生体電位信号のほかに、関節角度や重心位置を計測するセンサも搭載されています。このような複合的な仕組みにより、生体電位信号にもとづいた制御だけではなく、人の動作を予測した自律的な制御を可能としています。脚や腕を動かす際に、直接ボタンを押したり直接的に「動け」と指示したりせずに、装着者の運動意思に応じて、その動作を自然にサポートするように動くのです。個人差のある装着者一人一人に合わせ、ストレスを与えないような支援を実現できるよう最大限の工夫が施されています。