NI Week 2014で、同社にとっては新機軸となるターンキーシステムの「NI InsightCM Enterprise」を発表(日経エレクトロニクスが撮影)
NI Week 2014で、同社にとっては新機軸となるターンキーシステムの「NI InsightCM Enterprise」を発表(日経エレクトロニクスが撮影)
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 2014年8月4日から7日まで米国テキサス州オースチンで開催された、米National Instruments社という計測・制御装置メーカーのプライベートイベント「NI week 2014」を取材した(日経テクノロジーオンライン関連記事1同関連記事2同関連記事3同関連記事4)。同社のウリモノは、個々の応用先に最適な計測・制御システムを容易に構築できることだ。1500種以上用意された計測・制御用ハードウエアモジュールを組み合わせて同システムを実現する。システム開発を支援するグラフィカルなソフトウエアツール「LabVIEW」を使うことで、各モジュールをセットアップしたり、開発対象のシステムをシミュレーションしたり、また完成したシステムのGUIを構築できたりする。

 量産個数が1つや少数であっても、モジュールの組み合わせ方や調整をLabVIEWを使って工夫することで、最適な計測・制御システムを構築できるためだろうか、NI(やNI製品)のファンのエンジニアは多い。実際、NI Weekには、例年、4000名以上が参加する。驚くべきは、参加にはかなりの金額が要ることだ。一般個人は1350米ドルで、この額を払って参加している人は少なくないという。日本ではプライベートイベントと言えば、無償参加可能なのが一般的なことと比べると大きな違いがある。

 もう1つ驚くのが、LabVIEWなどの新機能が発表されると、大多数の聴衆が大きな拍手をして会場を盛り上げることだ。まるで米Apple社の新製品発表会のようだとの声をよく聞く。このように多くのファンに支えられて、少数量産や開発用途などで広く普及したNI製品だが、NI week 2014では、これまでとは全くことなる新製品が登場した。「NI InsightCM Enterprise」がそれである。

 InsightCM Enterpriseを一言で表せば、いわゆるターンキーシステム。顧客が欲しいシステムをNIが構築して納める。そのシステムは恐らくNIの計測・制御モジュールからなり、構築や完成済みシステムのGUIにはLabVIEWが使われるだろう。しかし、顧客は要求仕様をNIに伝えるだけで、構築作業には手を染めない。このシステムの顧客は、LabVIEWの新機能発表に興奮せず、拍手を送らず、もしかすると、NI Weekに足を運ばないかもしれない。いわゆるMakersブームもあり、今までの路線を強化した方が良いような気はするが、それでも、NIは新事業に挑むことにした。自らリスクを取って、同社にとっては新分野に踏み出す格好だ。

 この新製品発表を見たとき、日本でよく聞かれるエピソードが筆者の脳裏を横切った。「新規事業の提案会なのに、上が最初にした質問は『それはどこかでやっていることか』だった。新規性を問うたのかと思ったら、『どこもやってないことはリスクが大き過ぎる』と言われてがっかりした」という話だ。新規事業も「右へ倣え」にあなたの会社もなっていないだろうか。