前回は「900MHz Wi-Fi」ことIEEE802.11ahについて仕様書ドラフトを読みながら無線通信仕様書の読み方について解説しました。今回は「もう1つの900MHz通信規格」、IEEE802.15.4gについて(簡単に)取り上げます。

 IEEE802.15.4gの母体はアルファベットの付かないIEEE802.15.4です。IEEEの分類において802.11は「無線LAN」、802.15は「無線PAN」、802.16は「無線WLAN」とされています。802.11はいわゆるWi-Fiですし、802.16の代表選手はWiMAXことIEEE802.16eですね。

 無線PAN IEEE802.15の主な分科会には802.15.1(現在はBluetooth SIGに移管して活動終了)、802.15.3(OFDM PAN、UWB版802.15.3aとして世間を騒がせた)そして802.15.4があります。IEEE802.15.4はZigBeeの基礎技術として知られていますが、このブログで過去に何度か紹介したように、ZigBeeがデバイスプロファイルの定義や相互接続性認証まで含めた標準製品規格であるのに対し、802.15.4はその基礎部分を担う無線通信の規格仕様という違いがあります。

 802.15.4はLR-WPAN(Low Rate Wireless Personal Area Network)として定義されており、通信速度よりも小型・低価格・低消費電力であることが重視されています。物理層(PHY)が何種類も定義されていることも802.15.4の特徴で、802.15.4-2011仕様にはO-QPSK(~250Kbps)、BPSK(~40Kbps)、ASK(250Kbps)、CSS(~1Mbps)、UWB(850Kbps)そしてGFSK(100Kbps)のPHYが定義されています。周波数帯域は780MHz、868MHz、915MHz、950MHz、2.4GHzと多くのバンドが設定されており、地域によって使用可能な周波数と変調方式の組み合わせが分かれます。ZigBeeでは915MHz(北米と豪州)、868MHz(欧州)も使われていますが、最も広い地域で使用可能な2.4GHz帯のO-QPSK変調250Kbpsが主用されています。

 802.15.4自身はメッシュ機能を持ちませんが、複数ネットワーク間を相互接続するクラスター(Cluster)という機能を持ち、ZigBeeをはじめ802.15.4上で稼働するプロトコルにはクラスターを利用したメッシュ機能を備えるものが多いです。

 802.15.4のパケットサイズはヘッダーを含めて最大127バイトで、Wi-Fiの1500バイトに比べてかなり小さく定義されています。もともとTCP/IPを通すことなどあまり考慮していなかったのでしょうが、米政府が定めたスマートグリッド標準仕様「Smart Energy Profile 2.0(SEP2.0)」がHTTPとIPv6を採択したため、802.15.4の短いパケットサイズはIPv6を稼働させるに当たっての障害(不可能ではないが効率が悪い)になってしまいました。これを補うために6LowPAN(IPv6 over Low power Wireless Personal Area Networks)というヘッダーの分割・省略・圧縮を行う仕様が追加定義されています。