[1]効果推定のポイント

 今回は、効果推定のポイントを紹介します。手順の説明ではなく、筆者が重要だと感じたポイントに絞りました。読者が重要と感じる点と比較してみてください。

[1-1]効果は、定量・定性の両面で評価する

 効果は定量効果と定性効果の両面で評価します。しかし、筆者が過去に拝見した投資対効果が記された資料には、それらの片方しか記載されていないもの、またはどちらか一方に比重が置かれたものが意外と多かったように感じています。

 定量効果の記載がないものは、おそらく定量効果を推定するためのベース情報が取得できなかったり、効果を定量化するための削減率の根拠がなかったりしたことが原因だったのではないでしょうか。また、定性効果がプロジェクトの目的に対する補足的表現に留まっているものも多いと感じます。それは、推進者の主観に留まった表現となっているためにどこか客観性が不足していたり、定量指標の改善(例えば、リードタイム短縮や工数削減)に注力しすぎるあまり、業務の「質」の改善を効果として表現することへの意識が低かったりしたせいかもしれません。

 英語では、定量効果は「quantitative effect」、定性効果は「qualitative effect」と表現されます。つまり、“量的な効果”と“質的な効果”です。表現としては、定量・定性よりも量と質の方がピンとくると思います。

 ほとんどの業務改革プロジェクトは、量的効果と質的効果の両面に対して貢献しているはずです。定量・定性のどちらかに片寄るのではなく、量と質の両面でバランスよく評価する必要があります。