従来は“ゴミ”として扱っていたものに、実は大きな価値が眠っているかもしれない。その価値を引き出せれば、ビジネスチャンスになる。そんな可能性を秘めているものの一つが、コーヒーの果実(コーヒーチェリー)である。

 コーヒーの原料として我々が日常的に目にするコーヒー豆は、コーヒーチェリーの中に入っている種子だ。すなわち、人類はコーヒーを飲むために、わざわざ果実から種子だけを取り出しているということになる。ちなみに、コーヒーチェリーという名前は、熟した果実が赤いサクランボのように見えることから付けられた。

 それでは、種子を取り出した残りのコーヒーチェリーはどうなるのか。基本的には捨てられている。決して食べられないわけではなく、コーヒー農園などでは作業者が収穫したコーヒーチェリーの果肉をその場で食べる習慣もあるが、売り物にはならない。欲しいのは種子だけで、残りの部分は不要。それが従来の常識だった。

 しかし、この常識が今、覆ろうとしている。これまで誰からも見向きもされなかったコーヒーチェリーに、ビジネスの可能性を見いだした企業が出てきたのだ。それは、カナダのベンチャー企業のCFグローバルホールディングス(以下、CFグローバル)である。同社は、種子を取り出したコーヒーチェリーを十分に乾燥させ、微細な粉末にする技術を開発した。そして、その粉末を「コーヒーフラワー」と名付け、食品業界に普及させようとしている。フラワーといっても、花(flower)ではなく粉(flour)の方だ。

コーヒーの果実を粉末にした「コーヒーフラワー」
[画像のクリックで拡大表示]

 CFグローバルは、米スターバックスなどの食品企業を渡り歩いた経歴を生かしてコンサルティング業を営むダン・ベリヴォー氏と、シリアルアントレプレナーとして豊富な起業経験を持つアンドリュー・フェダック氏が創業した。食品業界の内情を知りつつも、慣習にどっぷり漬かっているわけではない。その程よい距離感が、ゴミ扱いされていたコーヒーチェリーから新たな価値を生み出すという斬新な発想につながった。