子供的な感性が創発を生む

山口 それから「完全なる自己の自由」がないと、知を創造していく「創発」はできません。何かにトラップされているとだめです。そういう意味で外れていない主流派は、その時点で既にトラップされているわけです。

――となると、「空気が支配している」といわれる日本では、創発は難しいのではないですか。

山口 だめでしょうね。そういう意味で、トラップから逃れる要素に「母親を失う」というのはあるかもしれない。人ってお母さんに最後までトラップされていますよね。男はお母さんが生きていると、基本的にマザー・コンプレックスですよ。

――まさにニュートンが幼い頃、母親に見捨てられていて、孤独をまぎらわすように自然観察と実験に熱中しています。ある種の不幸が革命的発見を促したと同時に、革命的な発見をすると不幸になる。

山口 ええ。ボルツマン、プランク、ハイゼンベルク…。みんな悲劇的な人生をたどっています。

――「完全なる自己の自由」というのは、制度的にも精神的にも、いろいろな意味でとらわれていないということですね。子供はそうですから。