日本の自動車産業が好調だ。こうした好調産業が国内にあることを強みにして、国内の半導体メーカーも、マイコンやパワー半導体など車載半導体を自社の事業の中核に据えようとしている。実際、ルネサス エレクトロニクスなどは車載マイコンの販売が好調で、直近の業績も好調である。

 ただし、不安要素もある。電子化と電動化が進む現在の自動車開発において、必ずしも日本の自動車メーカーが先頭を走っているとは思えないことだ。車載ネットワークの技術開発と標準化、車載用ソフトウェアの標準化、機能安全の標準化、48V電源への対応、SiCベースのパワー半導体の利用、先進運転支援システム(ADAS)の実用化など、多くの点で欧州の自動車産業の先行を許している状態である。こうした欧州自動車メーカーの積極姿勢と標準化活動に、欧米の半導体メーカーが早い段階から関与し、技術開発と事業の足場固めをしている。そして足下でも、欧米のマイコンメーカー、FPGAメーカー、パワー半導体メーカーが、日本の自動車メーカーに、深く食い込むようにもなってきた。

 そこで今回のSCR大喜利は、「日本の車載半導体はどこまで強いのか」をテーマに、日本の半導体メーカーの車載半導体事業の行方を5人の回答者に聞いた。質問は以下の三つである。

【質問1】日本の半導体メーカーは、今後も車載半導体での強みを維持できるのか?

【質問2】日本の半導体メーカーが、車載半導体事業を維持・成長させるために、改善すべき点はどこか?

【質問3】海外の自動車メーカーを顧客とするために、日本の半導体メーカーは何をしたらよいのか?

 回答者は以下の通り。

三ツ谷翔太氏
アーサー・D・リトル(ジャパン) マネジャー
「国内市場だけに目を向けていたら、プレゼンスの低下は避けられない」参照

清水洋治氏
某半導体メーカー
「資源を集中させて、機構側での強みをより強く育てる」参照

湯之上隆氏
微細加工研究所 所長
「下請け体質からの脱却とシステム設計力の強化が必須」参照

大山聡氏
IHSグローバル Technology 主席アナリスト
「マイコンだけではなく、アナログICやパワー半導体にも目を向けるべき」参照

いち半導体部品ユーザー氏
某ICT関連企業
「圧倒的な信頼性を積極的にアピールすべき」参照

表1●回答のまとめ
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