SCR大喜利、今回のテーマは、「トップランナーSamsungの行方」である。複合的な苦境の中にいる韓国Samsung Electronics社の半導体部門の行方と日本企業に対する影響について論じていただいた。今回の回答者は、服部コンサルティング インターナショナルの服部毅氏である。
服部コンサルティング インターナショナル 代表
【質問1の回答】半導体に限れば、すべての面でさらに重要視(いわば、半導体の復権)
Samsung社が9年ぶりに減収減益になった主原因は、いままで売上高や営業利益の6~7割を占めてきたスマートフォーン・ビジネスが、中国市場で、米Apple社の高価格ハイエンド・スマホートフォン「iPhone」と、中国メーカーのローエンド・スマホの板鋏みになったためである。買い替えるほどのわくわく感のない「Galaxy S5」は、グローバルにもシェアを落としている。一方、iPhoneは、業界最大の中国移動通信(Chaina Mobile)が扱い始めて以来、アナリストたちの予測の2倍以上の売れ行きだ。独自の魅力ある多数のコンテンツやサービスを提供できれば、中国でも高価で売れるということを証明した。ハード指向のSamsung社とは対照的だ。Apple社は、Samsung社とは対照的に、今年第2四半期の業績は増収増益である。
Apple社が、大画面スマホを得意とするSamsung社に対抗して、Galaxy S5 より大画面のiPhone 6を発売するのは時間の問題であり、一方で、中国メーカーのスマホはますます低価格化する。このため、Samsung社がますます窮地に追い込まれるのは目に見えている。かつて日本勢を追っていたSamsung社が、今度は、中国勢に追われる番だ。
Samsung製スマホの不振で、スマホ向け内製システムLSIも減産を強いられている。その上、Apple社のiPhone用A8プロセッサーの受託生産をすべて、あるいはほとんど、TSMCに持っていかれてしまい、Samsung社のシステムLSI事業は苦境に立つ。メモリーはライバルの新興中国スマホ・メーカーに飛ぶように売れている。データセンター向けメモリーも好調で、前期比+10%も売り上げが伸びた。半導体部門全体では、前期比+4%成長した。
Samsung社は、7月末に, 半導体分野に全設備投資額の6割に当たる14.4兆ウォン(1兆4千億円規模)を今年度投ずることを決めた。全投資額は昨年度と変わらないのに、半導体投資額を1.4兆ウォン増額したということは、スマホ不振は当分回復できないと読んで半導体で売上高・営業利益増大を狙うのだろう。いままで絶好調スマホの陰に隠れていた半導体が、スマホ不振とともに、主役に返り咲く番だ。