半導体の技術と業界の今と未来を、さまざまな視座にいる識者が論じる「SCR大喜利」、今回のテーマは「日本の車載半導体はどこまで強いのか」である。

 日本の半導体メーカーが絶対に負けたくない市場である車載半導体市場について考える。今回のSCR大喜利では、日本の半導体メーカーの車載半導体事業が、世界の半導体メーカーとの競争の中で、どのように活路を求めて行ったらよいのか探る。今回の回答者は、某半導体メーカーの清水洋治氏である。



清水洋治(しみず ひろはる)

某半導体メーカー
 某半導体メーカーで、(1)半導体の開発設計、(2)マーケット調査と市場理解、(3)機器の分解や半導体チップ調査、(4)人材育成、という四つの業務に従事中。この間、10年間の米国駐在や他社との協業を経験してきた。日経BP半導体リサーチにて、半導体産業に関わるさまざまなトピックスを取り上げつつ、日本の半導体産業が向かうべき方向性を提起する連載コラム「清水洋治の半導体産業俯瞰」を連載中。

【質問1】日本の半導体メーカーは、今後も車載半導体での強みを維持できるのか?
【回答】十分に可能と考える

【質問2】日本の半導体メーカーが、車載半導体事業を維持・成長させるために、改善すべき点はどこか?
【回答】スマホやテレビの失敗を直視し、規格を重要視する

【質問3】海外の自動車メーカーを顧客とするために、日本の半導体メーカーは何をしたらよいのか?
【回答】やはり最後は技術力。武器は絶対に失ってはならない

【質問1の回答】十分に可能と考える

 車載半導体には高い品質、不良率の低さ、温度性能など他の半導体と異なる仕様が求められる。これを満たすためには、設計・開発のみならず品質部門、製造部門、検査部門など多岐にわたるコンビネーションが必要になる。不良をゼロにすることが物理的にできない場合には、不良の原因を解析できる力も必要だ。

 日本の半導体メーカーは長い車載半導体の歴史から上記の全てをバランスよく持っている。これはこの先も十分な強みになると考えている。当然スマートフォンなどで培われたIT系半導体もクルマに入っている。単に情報処理と言う点では脅威になることは間違いない。しかし情報は単にあっても意味はない。精度の高い情報がただあるならば、スマートフォンで十分だ。

 その情報をクルマのメカニズムとつなげて初めて意味が生まれてくる。その点ではメカニズム側に強い日本の半導体には一層の「資源集中」が課題になっていると思う。強い部分をより育てることを怠ってはならない。譲る部分は譲り、強い分野はより力を注ぐ、これが生存の基本にあるべきと考える。