2013年に特許庁が公表した「平成25年度特許出願技術動向調査報告書」によれば、接合技術に関して日本の特許出願件数は1位である。接合技術の開発は、万が一にも剥がれないようにするまでの技術確立に大きな挑戦を必要とする割には、世の中で使われるようになるまでに時間がかかるため、短期的に利益を求めることの多い海外企業があまり参入して来ない分野と考えられる。そのためか、例えば樹脂と金属を強固に接合する技術を持つ企業は日本国内に10社近くあるが、どこに聞いても海外の競合企業については異口同音に「分からない」と答えるのが実情だ。

 中でも注目されているのが、狭い面積でも強い接合強度が得られ、引っ張り試験では接合面ではなく樹脂側の材料の途中が切れてしまう(母材破断)ような技術だ。ちょうど、紙同士をのりやボンドで接着すると、あとで剥がせなくなって、無理に剥がすと紙が破けてしまうのと同じような状況になる。ただし、紙の場合はのりを塗って重ね合わせる“のりしろ”をそれなりに広く取る必要があるが、近年の接合技術はのりしろなしで、棒材の断面同士を互いに継ぎ合わせて1本にするようなことができる。樹脂そのものと同程度かそれ以上の強度で接合できるからである。

 これによって、従来は樹脂だけで造っていた部品の一部だけを金属で置き換えて、そこだけ電気が通るようにしたり、強度を上げたりといった価値の高い部品ができる。少し一般化して表現すると、性質の異なる材料を自由に組み合わせて部品を造れるようになる。このような部品によって、さまざまな価値を生み出せるようになるというのが、昨今の接合技術が持つ意味である(図1)。

図1●樹脂と金属の接合技術を飛行機のシートに応用する提案
図1●樹脂と金属の接合技術を飛行機のシートに応用する提案
(「日経ものづくり」2011年11月号特報「設計をここまで変える樹脂・金属接合」)
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 その樹脂と金属の接合技術でよく出てくる用語が「アンカー効果」である。文字通り、アンカー(碇)が海底の凹みに引っかかるように、樹脂が金属側の微細な凹みに入り込んで動かなくなり、極端に強い接合強度を生み出す効果を指す。