ソフトバンクモバイルが「Pepper」を発表した2014年6月5日、吉本興業は「よしもとロボット研究所」の設立を発表した。事業内容として「ロボット、ヒューマノイド等に搭載するアプリケーションのプロデュース、企画、開発、販売及び関連する権利の運用管理」などを掲げる企業だ。

よしもとロボット研究所を設立した狙いやロボットの可能性について、同研究所の所長を務めるよしもとクリエイティブ・エージェンシー 企業営業センター センター長の山地克明氏、チーフプランナーを務める放送作家の中野俊成氏、チーフクリエイターを務めるバイバイワールドの髙橋征資氏とシンキョンホン氏の4人に聞いた。前回のソフトバンクモバイル林要氏へのインタビューに続き、日経エレクトロニクス 2014年7月21日号の特集「Pepperのいる生活」に掲載したインタビューのロングバージョンを掲載する。(聞き手は竹居智久、中道理=日経エレクトロニクス)

──Pepperの演出に関わるようになった経緯を教えてください。

山地 もともと携帯電話機用の動画コンテンツ製作などでソフトバンクと縁がありました。その縁で、ある日、1本の電話があったんです。「ロボット作るから中身を考えてくれ」と。

中野 具体的には、店頭に来たお客さんを楽しませるパフォーマンスの演出プランを作ってほしいという依頼でした。

 この演出プランというのは、Pepperというキャラクターを想定して、Pepperがやったら面白いであろう発言や“間”をまとめたものです。人を対象にした演出プランと発想は同じですが、時系列ではなくチャート式にしているところが違います。「ここに来たらこの発言」「こっちに来たらこうやって軌道修正しよう」といった目論見を入れ込んでいます。

 発表会の孫社長とのやりとりを完全な台本通りと思われているかもしれませんが、実は他にも色々な経路が用意してあったんです。

山地 最初は演出プランを納品し、その演出に合わせてPepperを動かす部分はソフトバンクモバイルが担当するという形で進めていました。

 でも、演出通りに動かすことがすごく難しかったそうです。人を笑わせようとするときの間とかってあるじゃないですか。プラン自体は面白いと思ってもらえていたんですが、その実装が全然できなかった。

 ソフトバンクから「そっち(吉本興業)で全部できない?」と言われて、すぐに「できます!」と答えました。実はその時点では確証がなかったんですが(笑)。

 そこで登場するのがよしもと所属の(クリエーティブユニットである)バイバイワールドの2人です。結論から言えば、2人は「天職」と言えるほど、この作業を得意としていたんです。

髙橋 僕たちは人工的に動く“モノ”で人を楽しませるというのを根本として活動してきたユニットです。元々大学の同級生なんですが、趣味が似ていて、一緒に作曲ツールをいじって音楽を作ったり、バンドとしてライブをやったりしていたのが始まりです。

シン そのうちに、ものづくりの色合いが強くなってきました。拍手をする機械「音手(おんず)」を作ってライブの時に打楽器として使ったりしていたのですが、それにもプログラミングが必要ですし、MIDIをいじるのにもプログラミングが必要でした。それが高じて、「じゃあiPhoneアプリを作ろうか」という話になったり。 今ではものづくり系の取り組みが中心で、ほとんど音楽はやっていませんね。

山地 バイバイワールドが作ったものがソフトバンクに高く評価されまして、Pepperのエンターテインメントアプリケーションの開発を一括して請け負う形になりました。

よしもとロボット研究所の所長を務めるよしもとクリエイティブ・エージェンシー 企業営業センター センター長の山地克明氏(左)、よしもとロボット研究所のチーフプランナーを務める放送作家の中野俊成氏(右)
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