通常、企業では経営企画部門などが中心となり、3~5年単位で中期経営計画(以下「中計」)を策定します。言うまでもありませんが、この中計は企業が中期的に目指す経営目標と、その実現に向けた方針が示されたものです。本来であれば、この中計を基に部門単位で達成のための目標を設定し方針を検討して、具体的な実行計画を策定していく必要があります。当然、R&D部門も例外ではありません。しかし、R&D部門に関しては、中計と紐付いた目標設定や、その達成に向けた実行計画の立案などが行われていない企業が多く見受けられます。

 この結果、場当たり的な対応が増加するなどの理由から開発リソースが不足し、商品投入の計画が遅延したり、想定以上に開発コストが増加したりするなどの事態に陥り、結果的に中計並びに事業目標が未達成に終わるケースが多く発生しています。もっと深刻なのは、この現実を認識していない、または認識しているけれども「R&Dは特別だから」といって課題を受け入れない企業があるということです。

 こうしたことから、会社全体の中計に紐付くR&D部門の目標設定や、それを達成するためのR&D改革課題、課題解決プランを一連化した計画を作成し、それに沿って業務を推進していくことが有効といえます。今回はこのような考え方の参考となる事例を紹介します。まずは失敗事例から見ていきましょう。

* 「R&D部門」には開発業務を行っている部署だけではなく、品質保証や生産技術など、開発機能を担う全ての部署が含まれます。