孔子の故郷近辺に一大特区を開発

 実際には2つのプロジェクトがスタートしている。一つは山東省での功能区の開発、もう一つは上海でのデイケアサービス・ビジネスである。

*功能区:中国共産党による国土開発計画のこと。「功能(環境による能力)」ごとに開発基準を立てる政策。日本語では土地開発、特区、開発特区が当てはまる。

 中国の高齢者介護事業は大きく3つに分けられている。1)不動産養老(不動産開発業者)、2)社区(政府主導の地域養老)、3)商業養老――である。提供するサービスも3種類に分かれ、a)老人ホーム、b)デイケアサービス、c)在宅サービス――である。山東省での功能区の開発は、1)不動産開発に、3つのサービスを組み込んだものだ。

山東省青島に昌楽寿陽山養老産業功能区の完成予想図
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山東省青島に昌楽寿陽山養老産業功能区の完成鳥瞰図
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 現在は、山東省濰坊市昌楽県宝通街の南に昌楽寿陽山養老産業功能区を建設中である。濰坊空港から約20km離れた場所に位置する。この施設は、昌楽県人民政府と上海復旦復華商業資産投資が「公益化、産業化」として、共同で2011年9月に資本金1億人民元で「昌楽復華養老産業発展有限公司」を設立させて開発している。全体の面積は約1400畝(1畝は667m2、約933,800m2に相当)の広さである。建築総面積は約110万m2となり、投資総額は約50億人民元である。

 同社が運営する老人ホームは、地域に点在するものではなく、一つの街として造成される。その規模は、まさに広大で約5000戸の住宅が準備され、ショッピングセンター、5つ星ホテル、幼稚園、ブランド中学なども設置される。これらの整備を2012年に開始し、約6年をかけて全施設を完成させる。第1期は2015年末に完成予定だ。

 上海の企業である上海復旦復華商業資産投資が最初の事業として山東省を選んだ理由は、山東省曲阜市が孔子の生まれ故郷であり、儒教思想が強い中国では今回のプロジェクトに適した地域だったからだという。今回ように大規模な住宅までを備えた街を開発するのにも理由があった。「中国では親を老人ホームに入れることは親不孝と考える傾向があり、抵抗感があるためだ」という。そこで、家庭の状況に合わせて、在宅介護、デイケアサービス、老人ホーム利用などの選択肢を用意し、出来るだけ子供と一緒に過ごせることを目的としている。この施設に入居する世帯の収入は、10万~50万人民元を想定している。

 功能区は主に3つの主要施設が設置される。核心功能区、商業配套区、生活配套区である。核心功能区には三級医院及び康復センター(6.5万m2)、社会福利センター(2.4万m2)、康復居住区(6.8万m2)が設置される。商業配套区には地標総合楼(ランドマークタワー:8万m2)、休閑商業街(リゾートショッピングストリート:5.3万m2)、生活配套区には高級居家養老社区(71万m2)と地下駐車場(10万m2)が造成予定である。