燃料電池車(FCV)の低コスト化に加え、FCVの普及に向けた最大の課題の1つとされるのが水素ステーションの整備である(図1)。しばしば「ニワトリが先か、卵が先か」と言われるが、水素ステーションの整備が進まなければFCVの利便性は確保できない。逆に、FCVがある程度普及しなければ水素ステーションの事業性に不安がつきまとう。水素の販売価格についても同様だ。価格が消費者の受容レベルにまで低減できなければ、消費者のFCV購入意欲はそがれる。一方で、FCVの普及台数が少なければ、水素の量産効果が期待できず、水素の販売価格を抑えることが難しくなる。FCVには、こうしたジレンマがある。

日本初の商用の水素ステーション「尼崎水素ステーション」
図1●日本初の商用の水素ステーション「尼崎水素ステーション」
岩谷産業が兵庫県尼崎市にある同社の中央研究所の敷地内に設置した水素ステーション(開所式は2014年7月14日)。同社の液化水素製造拠点であるハイドロエッジ(大阪府堺市)から輸送した液化水素を使い、FCVに水素を供給するオフサイト方式を採用する。充填圧力は70MPa。空から満充填までの充填時間は1台当たり3分以内。

 そこで重要なのが、FCVの普及に向けた初期段階において、こうしたジレンマをいかに軽減していくかだ。具体的には、高いとされる水素ステーションの整備コストを補助したり、当初の水素ステーションの稼働率を上げられるように支援したりすることである。

 資源エネルギー庁によれば、中規模(水素供給能力が300Nm3以上)でオフサイト方式(水素の製造を敷地外で実施する方式)の水素ステーションの場合、建設コストは4億6000万円。通常のガソリンスタンドの建設コストが7000万~8000万円とか1億円程度とされることを考えると、非常に高い。同庁によれば、水素供給コストのうちの約25%が、水素ステーション建設の減価償却費になるという。FCVの普及初期段階で水素の販売価格を抑えるには、水素ステーションの整備に伴う負担を軽減する措置が求められるという。