燃料電池車(FCV)の低コスト化に加え、FCVの普及に向けた最大の課題の1つとされるのが水素ステーションの整備である(図1)。しばしば「ニワトリが先か、卵が先か」と言われるが、水素ステーションの整備が進まなければFCVの利便性は確保できない。逆に、FCVがある程度普及しなければ水素ステーションの事業性に不安がつきまとう。水素の販売価格についても同様だ。価格が消費者の受容レベルにまで低減できなければ、消費者のFCV購入意欲はそがれる。一方で、FCVの普及台数が少なければ、水素の量産効果が期待できず、水素の販売価格を抑えることが難しくなる。FCVには、こうしたジレンマがある。
そこで重要なのが、FCVの普及に向けた初期段階において、こうしたジレンマをいかに軽減していくかだ。具体的には、高いとされる水素ステーションの整備コストを補助したり、当初の水素ステーションの稼働率を上げられるように支援したりすることである。
資源エネルギー庁によれば、中規模(水素供給能力が300Nm3以上)でオフサイト方式(水素の製造を敷地外で実施する方式)の水素ステーションの場合、建設コストは4億6000万円。通常のガソリンスタンドの建設コストが7000万~8000万円とか1億円程度とされることを考えると、非常に高い。同庁によれば、水素供給コストのうちの約25%が、水素ステーション建設の減価償却費になるという。FCVの普及初期段階で水素の販売価格を抑えるには、水素ステーションの整備に伴う負担を軽減する措置が求められるという。