緩やかな穏やかな信頼関係

 最初にお布施がよいと言った意味はここにある。企業同士が、長く付き合っている間柄であるとして、普段の事業やサービス以外のことを、催促したわけでもないのにしっかりとお世話をしているということだ。しかも、個別に報酬を求めることはなく、普段のお付き合いの中で発生している対価の中で済ましているということだ。

 事業を、お寺さんと檀家の付き合いのように、そして、対価の在り方をお布施のようにしたらどうだろう。企業は、新事業や新商品を開発しながら、生き残ることを考える。まして、これだけコスト競争力だけの国に追い上げられると、もう、右肩上がりの成長が続くわけはなく、いかに企業を継続させるか、それが一番の課題になる。

 さらに、事業はいい時もあれば悪い時もある。しかし、その結果を短期間で評価され、リストラを繰り返したり、経営幹部の首が次から次にすげ替えられたりするようでは、いかにも辛くはあるまいか。

 ビジネスの在り方を、あるいは企業同士の付き合い方を、お寺さんと檀家の関係のように考えたらどうだろう。お互いを深く理解し、お互いのためになることを、お互いにする。そのような緩やかな穏やかな信頼関係を構築して、お金のやり取りはお布施と考えるのだ。

 そうすれば、不要な競争に巻き込まれることもなく、企業同士は末永く付き合い、良い時も悪い時も寄り添いながら、事業は継続するのである。合掌。(笑)

開発の鉄人”ことシステム・インテグレーション 代表取締役の多喜義彦氏は、これまでに3000件の開発テーマの支援に携わり、現在も40社以上の技術顧問などを務めている(システム・インテグレーションの詳細はこちら)。「リアル開発会議」では、多喜氏を指南役に、オープンイノベーション型の新事業開発プロジェクトを開始する(詳細はこちら)。