STAP細胞の一連の騒動はMOT(技術経営)の観点からも学ぶことが多い教材です。どのような組織でも不祥事は起こり得ます。不祥事自体も問題ですが、問題が起こった時にどのように対処するか、組織のリスクマネジメントが試されるのです。不祥事が起こった時は、できるだけ早く情報を開示し問題を説明するという透明性、説明責任が重要になります。残念ながら、理研も早稲田大学もリスクマネジメントの反面教師となりそうです。

 もっとも、私自身も大学に勤務していますので、このような事件は他人事ではありません。日々顧客からのクレーム処理や訴訟リスクに直面しリスク管理に慣れている企業に比べ、国の研究所や大学は非常時のリスクマネジメントの体制が整っているとは言えないでしょう。研究所や大学は個々の研究者が大きな裁量を持って研究・教育を行う組織です。中小企業の集まりのような組織でもあり、リスク管理のようなトップダウンのマネジメントが効きにくい面もあります。果たして自分の組織は大丈夫か、他山の石としなければいけません。

 さて、博士の学位に関して早稲田大学の最終的な判断はこれからのようですが、博士論文の問題を認めながらも学位はそのまま、という「大学院先進理工学研究科における博士学位論文に関する調査委員会」の報告(リンク先)に対して、大学関係者からは「さすがにそれはないだろう」といった意見が寄せられています。問題のある論文でも学位が認定されるのならば、早稲田大学のみならず、日本の大学の信用にかかわりますし、博士取得者への評価も下がってしまいます。「まじめにやった人が損をする」というモラルハザードにもなりかねません。ディプロマミル(学位工場)と言われかねない対応に、早稲田大学の先生方からも異論が表明されるのは当然でしょう(「小保方晴子氏の博士学位論文に対する調査報告書」に対する早稲田大学大学院 先進理工学研究科 教員有志の所見:リンク先)。