テルライド地域とマウンテン・ビレッジ町を結ぶ無料ゴンドラ(写真:マウンテン・ビレッジ町)
テルライド地域とマウンテン・ビレッジ町を結ぶ無料ゴンドラ(写真:マウンテン・ビレッジ町)
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コロラド州の南西に設置された1.1MWのコミュニティーソーラー(写真:SMPA)
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無料ゴンドラの乗り場に設置された10kWの太陽光発電システム(写真:マウンテン・ビレッジ町)
無料ゴンドラの乗り場に設置された10kWの太陽光発電システム(写真:マウンテン・ビレッジ町)
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 日本では、ゴンドラを無料で提供するスキー場はあるだろうか。しかもそのゴンドラが、太陽光発電などの再生可能エネルギーの電力で動くとしたら…。コロラド州テルライド地域を訪れれば、そんなゴンドラに出会うことができる。周囲には、氷河が削り取った断崖に囲まれた、壮大な渓谷と山岳の景色が広がる。

 テルライド地域は、コロラド州の南西部にあり、ロッキー山脈の一部であるサンファン山脈エリアに該当する。サンファン山脈は標高が 1万4000 フィート(約 4267メートル)を超える 4 つの峰を有し、世界で屈指のスキー場としても知られている。冬のレジャーのみならず、ハイキングやマウンテンバイク、乗馬、ミュージック・フィルム・フェスティバルなどと、1年を通して旅行者を魅了する。

ゴンドラが無料のワケ

 こんな高級リゾート地で「ゴンドラが本当に無料なの?」と驚くだろう。無料なのにはワケがある。米国の国立歴史名所地区に指定されているテルライドの隣には、マウンテン・ビレッジ町という町がある。実はこの町は、1995年に正式に町(自治体)として認められた。自治体になるための条件として提示されたのが、「車の使用量を減らして大気汚染を防ぐために、ゴンドラを建設して無料で提供すること」だったのである。コロラド州は環境保護に大変力を入れていて、地方自治体もそれに従っている。

 このような公共の無料交通手段は、米国でも初めての試みだ。テルライド地域とマウンテン・ビレッジ町を結ぶこのゴンドラは約4kmの距離を運行しており、その間に3つの乗り場がある。8人乗りのゴンドラは、朝7時から夜中の12時まで運行している。年間で約225万人の旅行者と地元の人々が利用する。ゴンドラを運営するのに年間で約2百万kWhの電力を消費する。購入する電力は、現時点では主に火力発電所で発電されたものである。

再生可能エネルギーの利用へ舵

 マウンテン・ビレッジ町は、ゴンドラの電力を地元の再生可能エネルギーで満たすために、「グリーンゴンドラプロジェクト」を立ち上げた。ゴンドラ乗り場に募金箱を設置して、利用者からの募金を集めた。さらに、地元の電力会社San Miguel Power Associations社 (SMPA)とも協力して、「グリーン」にできる手段を模索した。

 まずマウンテン・ビレッジ町がした事は、SMPAが実施する「グリーンブロックプログラム」に参加することだった。このプログラムは、いわゆる環境価値の買い取り制度である。環境価値を購入すると、買い取った分だけ再生可能エネルギーを使ったとみなすものだ。「ゴンドラで使用される電力の全ての環境価値を2005年から購入しています」と、町の環境課でディレクターを務めるDeanna Drew氏は語った。

 環境価値は100 kWh当たり1米ドルで購入できる。町はゴンドラが1年間に消費する2百万kWhの電力を相殺するために、2万米ドルを支払っている。ちなみにこの環境価値は、コロラド州と隣のユタ州の境に設置された風力発電所から供給されるという。