図◎ダイハツ「コペン」はデザインの異なる3モデルを投入。上が2014年6月発売のコペンローブ。中が2014年秋発売予定のコペンX(クロス)モデル(仮称)。下が2015年半ば発売予定の第3のモデル。
図◎ダイハツ「コペン」はデザインの異なる3モデルを投入。上が2014年6月発売のコペンローブ。中が2014年秋発売予定のコペンX(クロス)モデル(仮称)。下が2015年半ば発売予定の第3のモデル。
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 ダイハツ工業が2014年6月19日に発売した新型「コペン」は、発売後1カ月(7月18日時点)で4000台を受注しました。コペンの月間販売目標は700台なので、その約6倍です。このエディターズ・ノートの2014年7月24日付でコペンを紹介した日経デザインの花澤デスクは、コペンにテレビCMがないことに触れています(関連記事)。ここでは、テレビCMを流していないのに販売が好調な理由を見ていきたいと思います。

 コペンは、とても特殊でチャレンジャブルなクルマです。服を着替えるように樹脂製の外板を“着せ替えて”クルマのデザインを変えられることが最大の特徴ですが、それだけではありません。

 スポーツカーの中でも市場が限られた2人乗りオープンカーである上に、市場が日本に限られる軽自動車。これ自体がチャレンジャブルです。日本のスポーツカー市場は年間約5万台(ダイハツ工業調べ)とほぼ壊滅状態にあるので、オープンカーを発売することは、自動車会社としてはとても難しい判断となるからです。そんな市場にダイハツは打って出ました。しかも、着せ替えの特徴を生かすために、デザインの異なる3つのモデルを相次いで投入します(図)。

 ダイハツ工業は着せ替えを実現し、その良さを顧客に分かってもらうために、開発と販売の両面から大改革を実施しています(その内容は『日経ものづくり』8月号で詳しく紹介いたします)。開発面では「樹脂外板」や「高剛性骨格」の実用化。販売面では顧客とのきめ細かなコミュニケーションを重視し、さまざまな仕掛けを用意しました。

 テレビCMなしも、その大改革の一環です。その理由はもちろん、販促費を抑えるためではありません。その分の費用を、コミュニケーション重視のさまざまな仕掛けに投入するためです。コペン専門知識を持った販売員の配置や地域に根差したイベントの開催、Webサイトなどよる顧客とのコミュニケーションが、コペンの顧客へのアピールの中心となります。この顧客とのコミュニケーションが、うまくいってコペンの受注を押し上げたのです。