航空・宇宙 航空機と宇宙開発の技術・産業動向を追う
 
第8回:一番つらい時期のプロジェクトを支えて

第8回:一番つらい時期のプロジェクトを支えて

吉川真・JAXA宇宙科学研究所准教授インタビュー(その2)

松浦 晋也=ノンフィクション作家/科学技術ジャーナリスト
2014/08/08 00:00
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 小惑星探査機「はやぶさ2」のプロジェクト・マネージャーとして、吉川真准教授は、川口淳一郎教授らとともに計画立ち上げのために奔走した。が、そこでぶつかったのは、工学系研究者と理学系研究者の認識の違いだった。2010年6月、初代「はやぶさ」がまさに奇跡と言うべき帰還を成功させ、日本中ではやぶさブームが巻き起こった。逆風の中を耐えてきたはやぶさ2に、今度こそ光が当たり、予算が付くかに思われた。

 しかし、ボトムアップと事前の説明責任を重く見る理学側研究者の反対意見は、大変強かった。その根底には、積極的にリスクを取る冒険的な性格を持つ宇宙探査と、一つひとつ地道に事実を積み重ねて世界の成り立ちを調べていく科学という2つの事業の間に存在する、性格の違いがあった。同じ“宇宙科学”というカテゴリーで括られていたので、双方が性格の違いに気がついて歩み寄るまでに、長い時間がかかってしまったのだ。

科学的成果を問われる

――はやぶさ2は、実際に予算が付いて計画が立ち上がるまでかなりの紆余曲折がありました。川口先生のお話では、まず宇宙研内部で理学と工学との意見をまとめるのに時間がかかり、さらに宇宙研の外、大学や研究機関の惑星科学の研究者との意見の相違を埋めるのにまた時間がかかったということでした。吉川先生からは、どう見えていましたか。

吉川 宇宙研内部ということでは、まず宇宙研内の小天体の研究者の間では対立はありませんでした。異論は、むしろ他の分野を研究している理学系の方から色々と出て来ましたね。典型的なのが「基礎からボトムアップで積み上げた計画になっていない」「トップダウンで計画を作るのはいけない」というようなものです。これは、川口先生が月・惑星探査プログラムグループ(JSPEC)設立へと動くきっかけになりました。「宇宙探査は、宇宙科学とは違うのだからトップダウンで行ってもいい」というロジックですね。
 2006年に最初の提案書をまとめて、外部に説明を始めた当たりから、惑星科学関係者からの異論や反論が出るようになりました。この外部からの反対の方が宇宙研内からの異論よりも、ずっと大きかったという印象です。
 はやぶさ帰還後、やっとはやぶさ2の計画が本格的に動き出しました。文部科学省の宇宙開発委員会で何回か審査があって、そのたびに私がはやぶさ2について説明しましたが、宇宙研外の理学の先生方からも、厳しい指摘をもらいました。

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