イラスト:ニシハラダイタロウ
イラスト:ニシハラダイタロウ
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 「風が吹けば桶屋が儲かる」という例え話がある。ご存知の方も多いだろうが、念のためにおさらいしよう。

 “風が吹くと土ぼこりがたって目に入り、目が炎症を起こしたりして悪化すれば目の不自由な人が増える。目の不自由な人は三味線で生計を立てようとする(昔は「角付・かどづけ」と言って人家の門前に立って音曲を演奏して金品を得ることがあった)から、三味線の胴に使う猫の皮を取るために猫が減る。そうすると、猫という天敵がいなくなるのでネズミが増えることになり、ネズミはあちこちで桶をかじって桶を傷めるので桶屋が(販売や修理が増えて)儲かる”という話である。

 要するに、ある出来事が回りまわって意外なところに影響が出るということだ。逆に、当てにもならないことを期待するようなときに使うこともあるようだ。

 いずれにしても、私はこの話が好きだ。なんと昔の人はいい話をつくるものかと感心する。感心する理由は、この話、ある意味でビジネスモデルの模範的な事例であるからだ。

 一見、従来からのビジネスに無関係と思われる何かの出来事(風が吹き)が起きて、それが次の需要(ニーズ・三味線)を喚起(呼び起こし)することになり、それを供給(シーズ・猫の皮)したら、次の新しいニーズ(桶の修理・販売)が顕在化して、元々あったビジネス(桶屋さん)が活性化されるという循環型のビジネスモデルであると、私は思うのだ。

 自然界で風を吹かせるのは無理な話だが、何かを仕掛けることはできる。その仕掛けのタイミングやツツキどころが良ければ、ビジネスの好循環は動き出すと、この話は教えてくれているのである。