一括受電契約に期待
信頼性では米国と比較して遜色がない日本の電力網だが、デマンドレスポンスなど最先端のスマートグリッド技術の導入では、欧米の後塵を拝しているとの見方が一般的だった。しかし最近では、こうした状況を変えるような試みが見られるようになった。
例えば、電力業界ではマンションやオフィスビルなどで、低圧連係の個別契約を高圧連係の一括受電契約に切り替える動きが活発化している。
中央電力(東京都千代田区)では、マンション向け一括受電契約が2014年2月に10万戸を突破した。経済産業省が定める「MEMS(マンションエネルギー管理システム)アグリゲータ」の1社である同社は、一括受電に切り替えたマンションのスマートメーター化を進めており、2014年6月末で48棟3630戸にスマートメーターを導入済みである(図1)。
MEMS事業の推進により、2015年までに150棟のマンションでスマートメーターを導入することが既に決まっているという。スマートメーターが設置されたマンションでは、電気使用量の見える化や時間帯別料金、ピークシフトやピークカットへの協力に対するポイント還元など、欧米のスマートグリッド事例と同様のサービスを提供していく。
スマートメーターを開発・製造するメーカーも、電力大手各社からの受注だけでなく、一括受電分野でのシェア拡大に余念がない。例えば、米ゼネラル・エレクトリック(GE)の日本法人である日本GEは、米国のスマートメーター事業での実績をベースに、日本市場の計量法や電波法に適合したスマートメーターを開発した(図2)。同社は一括受電市場向けで、数万台規模の販売を見込む。
スマートメーター導入の機運が高まっているのは電力業界だけではない。メーターのスマート化は、電気、ガス、水道の3分野で可能だ(図3、図4)。これは日本だけでなく、グローバル市場に共通の話である。
日本では、ガスや水道向けメーターのスマート化の方向性はまだ見えていないが、LPガス市場ではスマート化のメリットが業者と顧客の両方にあるため、導入が先行する可能性がある。
例えば、スマートメーターで流量を常時管理し、LPガスのボンベが空になりそうな家庭があったら満タンのガスボンベをすぐに届ける、といった営業面でのメリットが考えられる。